研究課題
樹状細胞(Dendritic Cell:DC)における細胞質型チロシン脱リン酸化酵素Shp-1の機能解析を目標にCre-loxPシステムを用いてDC特異的にShp-1を欠損するコンディショナルノックアウトマウス(Shp-1 CKO)を作製した。Shp-1 CKOではShp-1の欠損からDCが過活性になることで自己免疫性腎炎を自然発症し、T細胞はIFNγを強く産生する。本研究課題においては、2型糖尿病(DM)の病態形成における免疫異常を検討する目的で、高脂肪食を給餌することにより発症するマウス2型DMのモデル(HFD [High Fat Diet]モデル)をShp-1 CKOで行った。その結果、高脂肪食の給餌によりShp-1 CKOは肥満になったが、その程度はコントロールマウスと同程度であった。しかし、肥満となったShp-1 CKOでグルコースやインスリンを負荷して耐糖能を検討したところ、Shp-1 CKOの耐糖能障害はコントロールマウスに比べて軽度であった。また、インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRも、Shp-1 CKOでは有意に改善していた。そこで、Shp-1 CKOが高脂肪食負荷において耐糖能の悪化が軽度であった理由を探索する目的で、肥満となったShp-1 CKOの血清中のサイトカインを測定した。その結果、Shp-1 CKOとコントロールにおいて炎症性サイトカインであるIL-6、TNFαの産生量に有意な差が認められなかった。これらの事実は、DCに発現するShp-1が耐糖能の悪化要因としての機能している事を意味しており、またShp-1 CKOの耐糖能の改善には、炎症性サイトカインの寄与が少ないことを意味するものであった。
2: おおむね順調に進展している
本年度に得られた解析結果は実験開始時の予想に反するものであった。次年度においては、DMを発症したShp-1 CKOの内臓脂肪と筋肉量を測定する。さらに代謝性マーカーや代謝に関するホルモンを測定する。また、内蔵脂肪内に分布するマクロファージなどの機能解析を行う。
耐糖能の悪化に関し、皮下脂肪より内臓脂肪の寄与大きいことがマウスのHFDモデルによる解析から明らかになっている。従って本年度は本学に設置済みの実験動物用のX線CTであるlatheta LCT-200を用いて、肥満となったマウスの皮下脂肪と内臓脂肪を定量する。さらに筋肉量も測定する。本年度は炎症性サイトカインの産生に関して検討したが、次年度はレプチンやアディポネクチンなどの測定を行う。また、内蔵脂肪内のマクロファージの表面形質の変化などを検討する。
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