研究課題
関節リウマチ(RA)は滑膜関節の炎症と破壊を主徴とする慢性の自己免疫疾患であるが、患者血清中にはシトルリン化タンパクに対する抗体(ACPA)の産生が特異的に認められ、診断に重要である。また、ACPAはRA発症以前から陽性になること、ACPAの抗体価が高いほど関節破壊が強いことから、ACPAのRA病態への関与が示唆されているが、ACPAやその抗原がRAの発症にどのように関わるかは不明である。これまで我々は、RA患者よりモノクローナルACPA(CCP-Ab1)を取得し、対応抗原とその病原性について検討し、その病原性を有する対応抗原はシトルリン化フィブリノーゲンであることを明らかにした。すなわち、ラミナリン(LA)をSKGマウス腹腔内に投与することで自己免疫性関節炎を誘導するRAモデルマウスにおいて、CCP-Ab1を静注すると関節炎の増悪がみられ、血清IL-6、MMP-3、内因性ACPAが増加すること、関節周囲の骨吸収が亢進し、骨、滑膜境界部における破骨細胞の増加を認めた。さらに、このモデルを用いてCCP-Ab1、胚型CCP-Ab1(抗体遺伝子のCDR1, CDR2を初期型、胚型に戻した抗体)、対照IgGを静注し、6週間後の関節炎の誘導を上記項目について検討したところ、CCP-Ab1においてのみ関節炎、関節破壊の悪化が引き起こされた。胚型CCP-Ab1投与によって関節炎の悪化がみられないことから、ACPAは体細胞変異を繰り返すことによって、その病原性を獲得することが明らかになった。この成果をArthritis Rheumatology誌に報告した。
3: やや遅れている
RA滑膜細胞における炎症性サイトカイン、ケモカインの発現に対するCCP-Ab1, cit-Fbの効果を検討した結果、cit-FbはTLR4受容体を介して、CXCL10を中心とするケモカインの発現誘導を引き起こす結果を得たが、cit-Fb試薬にLPSのコンタミネーションの懸念が生じ、現在慎重に検討中である。一方、RA滑膜細胞において、CCP-Ab1の炎症性サイトカイン発現誘導作用は認めていない。
CCP-Ab1の関節破壊の機序を明らかにするために、ヒト末梢血単球における、破骨細胞分化誘導に対するCCP-Ab1の効果を検討中である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件)
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