研究課題
本研究の目的は,アトピー性皮膚炎の病態形成に係る病的線維芽細胞の同定にある。アトピー性皮膚炎患者の皮疹部の皮膚においても炎症性サイトカイン・ケモカインをドミナントに産生する病的線維芽細胞が存在している。この病的線維芽細胞の特徴の一つとしてペリオスチンを高発現することが報告されている。そこで本年度は,ペリオスチンを高発現する病的線維芽細胞が皮疹部で出現するモデルマウスの選別を実施した。MC903を野生型マウスの顔面皮膚に連日塗布するモデルと,自然発症系のアトピー性皮膚炎マウスモデルとして,我々が樹立したNestin-cre;Ikk2f/fマウス(FADSマウス)を用いた解析を行った。MC903およびFADSマウス共に,顔面皮膚の皮膚炎部において高度なペリオスチン沈着が認められた。さらに,MC903をPostn-MerCreMer;ROSAtdRFPマウスに塗布し,皮膚炎部位から採取したPDGFRa+;CD45-;EpCAM-;CD31-繊維芽細胞群の50%程度にレポーター遺伝子の発現を認めた。この結果から,MC903による皮膚炎ではペリオスチンを高発現する病的線維芽細胞が出現するマウスモデルであることが明らかとなった。現在FADS;ROSAtdRFPマウスの掛け合わせを進めており,MC903のモデルと同様の解析を実施する予定である。
2: おおむね順調に進展している
アトピー性皮膚炎における生体内での病的線維芽細胞の解析には優れた動物モデルを使用することが重要となる。本年度は少なくとも一つの動物モデルで,ペリオスチンをドミナントに発現する線維芽細胞の誘導を確認することができた。
薬剤(MC903)を用いた誘導型のアトピー性皮膚炎マウスモデルにおいてペリオスチンを高発現する病的線維芽細胞の出現を確認することができたため,自然発症モデルであるFADSマウスにおいてもペリオスチンを高発現する病的線維芽細胞が出現してきているのかをレポーターマウスを用いて解析を実施する。
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J Invest Dermatol
巻: 139 ページ: 1274-1283
10.1016/j.jid.2018.10.047