研究課題
家族性地中海熱(FMF)は関節炎および漿膜炎による発熱の再発を特徴とし、pyrinをコードする地中海熱(MEFV)遺伝子のバリアントが深く関与する自己炎症疾患である。研究代表者らの先行研究により本邦のFMFにおけるMEFV遺伝子変異/多形のパターンは、古典的な地中海沿岸地域のFMFとは大きく異なることが示唆され、日本人ではエクソン10の変異の割合が少なく成人発症例が多いことを明らかにした。また、研究代表者はFMF患者の発作期と非発作期におけるサイトカインプロファイルを明らかにし、IL-6、IL-17、IL-18が診断に有用である結果を明らかにしたが、患者の層別化や治療反応性を予測する因子は同定されていない。研究代表者は、日常診療で典型例および非典型例のFMFの診療に携わっており、早期診断が困難である点、コルヒチン無効例を予測することが困難である点に直面している。令和2年度は、下記の通り研究を遂行した。1. FMF典型例患者の全ゲノム解析とメチル化解析当院と関連施設におけるFMF典型例患者を対象に次世代シーケンサーを用いて自己炎症性疾患に関連する遺伝子の解析を行った。この結果を用いて、全ゲノム解析を行うFMF患者の抽出を行う予定である。2. FMFの重症度や病型に関連するMEFV遺伝子多型/変異の同定FMFの臨床情報を前向きおよび後ろ向きに詳細に収集しレジストリを拡充することにより、典型例、非典型例の病型分類、コルヒチンの治療反応性、アミロイドーシス合併重症例と関連するMEFV遺伝子多型/変異を探索中である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、FMF典型例・非典型例・重症例に寄与するバイオマーカーを同定するための解析に必要な患者検体は、収集できている。
本年度で得られたDNA検体での遺伝子解析の結果や臨床情報をもとに、全ゲノム解析およびメチル化解析を用いた解析を行い、FMF典型例に特徴的なゲノム異常・ エピゲノム異常を同定する。また、FMF患者血清バンクを用いた活性型IL-1β、活性型IL-18の測定を行いFMFの診断および予後予測に有用かどうかの検討を行う。
COVID感染流行につき、患者検体が減少したため、消耗品費が当初より低い額になった。次年度の消耗品購入に充てる予定である。
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Clin Exp Rheumatol.
巻: 38 ページ: 35-41
巻: 38 ページ: 49-52