研究課題
本研究は神経堤細胞に特異的に発現する遺伝子Ncxのノックアウト(KO)マウスの腸管における一酸化窒素(NO)産生神経の増加に伴う腸内細菌叢のdysbiosisおよび炎症性腸疾患が誘導されることに着目した.Ncx-Koマウスの関節炎モデルを解析することによってRAおよび自己免疫機構が関連すると考えられる関節炎の発症・維持機構における腸管の神経・免疫系制御機構やNOの役割の解明を目的とする.本研究はSKGマウスを用いたRAモデルを解析する.SKGマウスはT細胞受容体刺激伝達分子ZAP-70の点変異により,潜在的に自己反応性T細胞を有する.真菌成分であるべータグルカンの投与により関節炎が惹起される.その関節炎の発症には,関節炎惹起性T細胞(Th17細胞)の誘導が関与すると考えられている.病理組織学的には滑膜の増殖や炎症細胞浸潤を認め,リウマトイド因子や抗核抗体が血清中に検出される.2021年度はSKGマウス遺伝子バックグラウンドのNcx-KOマウスとNcx-WT(野生型)マウスのRA様関節炎に発症について解析した.その結果,マウスの関節炎スコア(関節の腫脹)および足関節の病理学的炎症スコアは,Ncx-KOマウスで有意に減少し,関節炎の発症が抑制された.また,Ncx-KOマウスの各臓器において,CD4陽性T細胞において、種々の炎症性サイトカインのmRNAの発現がNcx-WTと比べて低下していた.以上より,自己免疫性関節炎の発症に対してNcx-KOマウスは抵抗性であることが明らかになった.Ncxの役割については不明であるが,CD4陽性T細胞の機能制御に対する関与が示唆された.また 自己免疫疾患の病態において腸内細菌叢のdysbiosisが深く関与することが示唆された.
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