前年度までにCaptopril処理によるClaudin-5の蛋白レベルの回復が抗Sm抗体存在下でも判明したことから、MMP-2阻害によりClaudin-5の蛋白レベルが回復しているのかどうかについて実験を行った。MMP-2特異的阻害薬であるAPR100を用い、Captoprilによる刺激と同様、HUVECに抗Sm抗体(もしくはコントロール)刺激とともにAPR100による阻害実験を行った結果、Claudin-5の蛋白レベルは有意にAPR100処理が非処理と比較し回復させていた。加えてAPR100自体は抗体刺激のない状態ではClaudin-5の蛋白レベルに対して有意な差作用は示さなかった。このことよりClaudin-5の蛋白レベルは抗Sm抗体刺激によるMMP-2の活性化とそれに引き続くClaudin-5の蛋白の分解によるものであることが判明した。 これら一連の結果から当初の研究目的である抗Sm抗体の血管内皮細胞における血液脳関門の破綻メカニズムの一端が明らかになった。全身性エリテマトーデスにおける血液脳関門破綻の原因については不明であったが、その疾患特徴であ自己抗体が直接的に血液脳関門の破綻をきたすこと、蛋白レベルの変化ではなく活性化MMP-2による分解が生じていることが判明したことはこれまでにはない新しい発見である。 本実験結果を国際ループス学会2023で発表するとともに論文化を予定している。
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