研究課題/領域番号 |
19K08924
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
山崎 聡士 久留米大学, その他部局等, 准教授 (30367388)
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研究分担者 |
井田 弘明 久留米大学, 医学部, 教授 (60363496)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自己炎症性疾患 / 転写後制御 / 3'非翻訳領域 / mRNA半減期 |
研究実績の概要 |
自己炎症症候群は遺伝子異常を発症機序によって起こる炎症性疾患と考えられている。しかし実臨床では、アミノ酸置換が起こらない遺伝子変異の症例が多く存在し、この場合の病態は解明されていない。自己炎症症候群においてアミノ酸置換が起こらない遺伝子変異として、mRNAの3’非翻訳領域の変異が報告されている。その病態メカニズムや病態形成への寄与度は解明されていない。3’非翻訳領域はmRNAの分解や翻訳効率の制御配列であるため、該当する遺伝子の発現に大きな影響を与える。本研究計画ではmRNA代謝の解析技術を用いて、原因遺伝子の3’非翻訳領域の変異がこれを有するmRNAの発現制御に影響を与えるか否か、またその結果として原因遺伝子の機能の獲得や喪失につながるという、自己炎症症候群の未知の病態モデルの検証を目的としている。 2019~2020年度は、自己炎症症候群の既知の3’UTRの変異がレポーターmRNA代謝に及ぼす影響の検討をするために、Rabbit由来のglobin mRNAをレポーターとして用 いることができるプラスミド、「pTet-7B」のglobin遺伝子の3’非翻訳領域に自己炎症性疾患遺伝子解析サイト「Infever」で3’非翻訳領域の変異が報告されている8遺伝子の うち、6遺伝子、IL1RN(2), MEFV(6), MVK(3), NLRP3(2), NRLP7(6), NOD2(6) (括弧内の数は、各遺伝子mRNA 3’非翻訳領域における変異の報告数)のクローニングおよ びその配列確認のためのシーケンス、さらにこれらのレポーターの培養細胞での発現確認を完了した。 3’非翻訳領域変異の導入を完了し、研究期間中に作成したレポーターを用いたアッセイを行い、自己炎症症候群における mRNAの3’非翻訳領域の変異がもたらすmRNA代謝に及ぼす影響を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度に、自己炎症性疾患遺伝子解析サイト「Infever」で開示された自己炎症性疾患で報告された変異を有する遺伝子のうち、3’UTRの変異が報告されている6遺伝子に関して、レポータープラスミドであるpTet-7Bへのクローニングおよび遺伝子配列確認が完了した。さらにQuickChange Lightning Site-Directed Mutagenesis Kit(アジレント・テクノロジー)を用いて、各遺伝子の3’UTRに変異を有したレポーターを作成し、順次配列確認と培養細胞での発現確認を行なった。この段階で、MEFVの6変異の中の一つで、レポーター発現低下が予想される結果を得ており、今後次の段階の検討を行う。 2020年度は、このレポーターを用いたアッセイにより、mRNA代謝に及ぼす3’非翻訳領域の変異候補の探索を行っている。具体的にはレポーターを培養細胞で発現させ、トータルRNAを抽出し、ノーザンブロットを行う。Tet-Offシステムを使用し、ドキシサイクリンにてレポーターmRNA転写を停止したのちの発現量を定量し、その半減期を測定する。通常勤務であれば週3アッセイは可能であるが、2020年度は変動が大きい臨床業務のため、実験キャンセルを余儀なくされた期間があり、研究進捗の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も、ドキシサイクリンによるTet-Offシステムを使用したレポーターmRNAの半減期を測定のアッセイを繰り返していくことになる。このアッセイの実験手技は確立しているため、臨床業務の逼迫が発生した場合でも、アッセイのキャンセルをせず、少しづつでも進めることが可能となるようなスケジュール管理を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、令和2年以降所属施設の医局長として新型コロナウイルス診療や対応、マネージメントに従事していたため、一時的な研究実施の中断が発生し、執行の時期を逸したためである。使用計画としては、今後本研究は予定通り研究計画を進めていくため、令和3年度の前半に使用する予定である。
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