研究実績の概要 |
自己炎症症候群は遺伝子異常を発症機序によって起こる炎症性疾患である。しかし実臨床では、アミノ酸置換が起こらない遺伝子変異の症例も存在し、この場合の病態は解明されていない。自己炎症症候群においてmRNAの3’非翻訳領域の変異が報告されている。3’非翻訳領域はmRNAの分解や翻訳効率の制御配列であるため、該当する遺伝子の発現に大きな影響を与える。本研究計画では原因遺伝子の3’非翻訳領域の変異がこれを有するmRNAの発現制御に影響を与えるか否かを検証した。 Rabbit由来のglobin mRNAをレポーターと して用 いることができるプラスミド、「pTet-7B」のglobin遺伝子の3’非翻訳領域に自己炎症性疾患遺伝子解析サイト「Infever」で3’非翻訳領域の変異が報 告されている8遺伝子のうち、6遺伝子、IL1RN(2), MEFV(6), MVK(3), NLRP3(2), NRLP7(6), NOD2(6) (括弧内の数は、各遺伝子mRNA 3’非翻訳領域における変異の報告数)のクローニングした。 作成したレポータープラスミドを細胞株に導入し、globin mRNAの発現をノーザンブロットにて確認した。 結果として、3’非翻訳領域の変異は定常状態においてはレポーターの発現に影響を及ぼさなかった。各種RNA結合蛋白との共発現を行い同様の検討を行ったところ、NLRP3に対して抑制的に作用するRNA結合蛋白Xを同定した。これまでにもRNA結合蛋白であるtristetraprolinがNLRP3の発現制御に寄与していることが知られていたが、これと同様の機能を発揮しうる新たな分子として、自己炎症症候群の未解明の病態の解明に寄与すると期待される。
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