研究実績の概要 |
我々は大規模in silico解析により、CD4陽性T細胞にて高発現し、特異的にスーパーエンハンサー(SE; クラスターを形成するエンハンサー領域)制御を受け、RA疾患に感受性のある遺伝子としてUBASH3Aを見出した。しかし、T細胞受容体(TCR)シグナルの抑制因子として機能するUBASH3Aの発現制御機構およびRA病態形成機構は不明であった。 令和元年度(初年度)は1)健常人の末梢血単核球由来CD4陽性T細胞に比してRA患者のUBASH3A発現は低値であった。2)健常人に比してRA患者においてUBASH3A遺伝子座に転写共役因子MED1およびBRD4のリクルートが減少し、転写抑制因子BACH2が増加した。以上より、UBASH3A子座においてBACH2がリクルートされ、SE形成が障害を受け、UBASH3A遺伝子発現が低下するメカニズムが予想された。 令和2年度(次年度)は1)Enhancer RNA (eRNA)-1, -3のSense鎖およびAntisense鎖を標的にするLNAをCD4陽性T細胞に導入するとUBASH3Aの発現が低下した。以上より、UBASH3A発現のイベントにeRNAが関与する機構が見出された。 令和3年度(最終年度)は1)RA患者のCD4陽性T細胞に発現するTCRを刺激するとIL-6が産生されたが、UBASH3Aの過剰発現はその産生を有意に抑制した。また同細胞のTCRを刺激するとNF-kBのリン酸化を誘導しIL-6プロモーターへリクルートされたが、UBASH3Aの過剰発現により同リン酸化は減弱し同プロモーターへのリクルートは抑制された。RA患者によってはIL-6阻害薬が臨床的寛解をもたらすことを踏まえると、RAの炎症病態形成にUBASH3Aが重要な役割を果たすと考えられた。
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