前年度までの研究によってパラインフルエンザウイルスCタンパク質の共通の標的はIFNAR2であることが推定された。しかしIFNAR2結合能を喪失したC変異体を得ることはできなかった。そこで本年度は、ヒトパラインフルエンザウイルス3型(hPIV3)およびマウスパラインフルエンザウイルス1型(mPIV1)Cタンパク質のIFNAR2に対する結合領域を明らかにし、IFNAR2結合能を喪失したC変異体を作成することを試みた。hPIV3C(aa1-199)の複数の欠損変異体のIFNAR2結合能を調べた結果、C(81-120)の領域がIFNAR2の結合に重要であることが示唆された。一方、mPIV1C(1-204)では、N端を欠損したC(85-204)はIFNAR2結合能を喪失していたが、IFN応答阻害能は保持していることがわかった。この結果から、Cは、IFNAR2以外の分子、あるいはIFNAR2を含む複数の分子を標的としていることが示唆された。C(1-204)は、IFNAR2以外にSTAT1、JAK1にも結合するが、C(85-204)は、STAT1のみに結合する。そこでC(85-204)に点突然変異を導入しIFN応答阻害能とIFNAR2、STAT1、JAK1結合能の相関を調べたところ、I型IFN応答阻害能を十分に保持する変異体は、STAT1かIFNAR2のどちらかに結合する能力を保持していた。以上から、CはSTAT1、IFNAR2を含む複数の分子を標的としているか、あるいはSTAT1,JAK1、IFNAR2以外の未知の分子を標的としている可能性が考えられた。また、C(85-204)にたったひとつの点突然変異を導入するだけで、JAK1結合能、IFNAR2結合能の一方あるいは両方を獲得することが示され、標的分子結合能を喪失したC変異体を発現する組換えウイルスは毒性復帰しやすいと推定された。
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