研究課題
2016年6月~2018年7月の間、西日本の医療機関で実施された医師主導型の臨床試験「重症熱性血小板減少症候群患者(SFTS)を対象としたファビピラビルの臨床試験」を国立感染症研究所と共同で行い、エントリーを終了した。エントリーされた計26名のうち23名がSFTSの確定診断を得られた。全データの収集および不足データの補充を行った上でデータクリーニングを行い、詳細な解析(28日致命率、SFTSウイルス量の推移、ウイルス量と予後との関連性、ウイルス消失までの日数、患者背景、臨床症状およびその重症度評価、血液検査値およびその重症度評価、臨床症状の改善度、併存治療、有害事象、ファビピルビルの血中濃度など)を施行中である。ファビピルビルの有効性および安全性が示唆される多くの結果が得られている(現在、論文投稿準備中)。末梢血の異型リンパ球の解析においては、2019年度に1名の新規患者が当院に入院し、形態学的解析を行った。発症5日目に当院初診となり、末梢血リンパ球において8.5%の形質芽細胞様の異型リンパ球を確認した。また、20.5%の顆粒リンパ球(Large granular lymphocytes; LGL)の出現を確認した。これらはそれぞれ、発症6日目(14.5%、9%)、発症7日目(7.5%、0%)、発症11日目(2%、0%)と興味深い変動が見られた。表現型解析においては、この疾患が稀少疾患であることから、同じくこの異型リンパ球に着目した研究「SFTS発病・重症化機構に関わる宿主因子の探索的研究(国立感染症研究所、研究責任者:鈴木 忠樹)」に単核球分離後に検体を送付し、解析中である。
2: おおむね順調に進展している
2016年6月~2018年7月の間、西日本の医療機関で実施された医師主導型の臨床試験「重症熱性血小板減少症候群患者を対象としたファビピラビルの臨床試験」を国立感染症研究所との共同で行い、エントリーを終了した。全データの収集およびクリーニングを行い、詳細な分析を行い結果が着実に出てきており、現時点で研究継続に支障はきたしていない。末梢血異型リンパ球の解析は2019年度は1件と少なかったため、県内の医療機関にこの疾患の啓発を行い、検体収集に努めたい。
これまでの我が国におけるSFTS症例は限られており、臨床像の全貌解明には症例数の蓄積が必要であった。このため平成28年度~平成30年度AMED新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に対する診断・治療・予防法の開発及びヒトへの感染リスクの解明等に関する研究」(研究代表者:西條政幸)の「重症熱性血小板減少症候群患者を対象としたファビピラビルの臨床試験」(研究責任者:安川正貴)の実務責任者として、西日本のSFTS診療経験のある32医療機関のネットワークを構築し、計23名のSFTS患者症例を蓄積できた。各医療機関に配布した診療調査報告書および国立感染症研究所に送付された検体などから得られた膨大なデータを集計し、クリーニングされたデータを予定通り詳細に解析・検討していく。末梢血異型リンパ球においては、当県での患者発生数が減少していることから、県内での検体収集に努めると共に、この貴重な検体を全国で検体収集している国立感染症研究所と連携することで、病態解明に寄与していく。
(理由)愛媛県でのSFTS発症数が予想以上に少なかったので、解析対象症例が十分に確保できず、研究費を次年度に繰り越すことにした。(使用計画)対策として愛媛県内の各医療機関にSFTSの啓発を行い、研究対象症例数を増やす方針を進めている最中である。そのため、繰り返し研究費が必要となる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 18533
10.1038/s41598-019-55149-z