研究課題
HIV-1はCCR5をコレセプターとして使用するR5ウイルスとCXCR4をコレセプターとして使用するX4ウイルスに分類される。一般にHIV-1の感染はR5ウイルスにより媒介され、R5ウイルスの持続感染状態となるが、感染後期に病態の悪化とともにCXCR4 を利用するX4ウイルスが出現してくる例が約半数に認められる。しかしながら、なぜこのようなコレセプターのスイッチがおこるのか、またその詳細な機序については明らかとなっていない。我々はHIV-1のコレセプター利用性を解析している中で、同一個体内に異なるコレセプター利用性を有する複数の集団が存在している症例があることを見出した。しかしながら、このような混合感染の頻度については明らかでなかった。そこで本年度は42例のHIV-1感染麻薬常用者の血漿から抽出されたウイルスRNAの次世代シークエンサー解析を行い、HIV-1 env のV3領域の同一個体内の多様性を解析した。その結果、通常のクローニングでは均一なウイルス集団を形成していると判断された症例でも、異なるコレセプター利用性を有するウイルスがマイナー集団として検出できる症例が存在していることが判明し、最終的には42例中22例が異なるコレセプターを利用するウイルスが同一個体内で混合感染していることを明らかにした。このことは、同一個体内で、感染初期にはマイナー集団として存在していたX4ウイルスが、感染後期に主要な集団として選択されてくることが推測され、コレセプターの利用性のスイッチの新たな機序が明らかとなった。
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