研究課題
日本において、肺非結核性抗酸菌(NTM)症の罹患率は増加の一途をたどっており、肺NTM症の内、肺Mycobacterium avium complex (MAC)症が約90%を占めている。肺MAC症はその病態において依然不明な点が多い、難治性の慢性呼吸器感染症である。本研究では、MAC細胞壁脂質に着目し、肺MAC症の病態を検討した。AIDS患者由来のM. avium subsp. hominissuis (MAH)104の菌体から菌細胞壁脂質であるtrehalose 6,6'-dimycolate (TDM)、trehalose 6-monomycolate (TMM)を抽出した。ヒト末梢血単核球由来マクロファージ(ヒトマクロファージ)をTDM、TMMで刺激したところ、炎症性サイトカインであるTNF-αの遺伝子発現が有意に亢進することを確認した。更に、肺MAC症患者由来のM. avium subsp. hominissuis TH135の菌体から抽出したTDM、TMMで、ヒトマクロファージを刺激しても、炎症性サイトカインであるTNF-α遺伝子の発現が有意に亢進することを確認した。以上より、肺MAC症の病態において、TDM、TMMの炎症を引き起こす物質としての関与が示唆された。ヒトマクロファージにglycopeptidolipid (GPL)含有量が少ないMAH104のrough型を感染させ、そこにMAH104のsmooth transparent型から抽出したGPLを加えると、感染後4日目の細胞内菌数の有意な上昇を認めた。GPLがヒトマクロファージにおけるMACの殺菌を抑制している可能性がある。以上より、慢性呼吸器感染症である肺MAC症の病態にTDM、TMM、GPLといった菌細胞壁脂質が関与していることが示唆された。
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