研究課題/領域番号 |
19K08939
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
相澤 志保子 日本大学, 医学部, 准教授 (30513858)
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研究分担者 |
舛廣 善和 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (00336083)
早川 智 日本大学, 医学部, 教授 (30238084)
権 寧博 日本大学, 医学部, 教授 (80339316)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 抗酸菌 / ワクチン / 非結核性抗酸菌症 / 感染免疫 / 細胞性免疫 |
研究実績の概要 |
2019年度は以下の3つの研究を行なった。 1. 組換えBCG(rBCG-Mkan85B)の非結核性抗酸菌(NTM)感染防御能の評価:rBCG-Mkan85Bを接種したマウスとBCGを接種したマウス、対照群として、ワクチン非接種マウスに、NTMの中でも日本で感染者数が多いMycobacterium aviumとMycobacterium kansasiiをそれぞれ経気道感染させた。感染4~6週間後に解剖し、臓器内生菌数を調べた。その結果、M.aviumを感染させたマウスでは、非接種群、BCG接種群、rBCG-Mkan85B接種群に臓器内生菌数の違いが見られなかった。M.kansasiiを感染させたマウスでは非接種群に比較し、BCG接種群、rBCG-Mkan85B接種群の臓器内生菌数の低下が見られた。今回は、high-doseの菌を感染させたために、差が出なかったと考えられる。 2. ペプチドワクチン作成:ワクチン開発の抗原用のタンパク質の準備として、Ag85BのPCR産物をクローニング等して、発現や精製確認を行った。 まず、合成遺伝子で Pep8x6-S10-His20を作成することを試みたが、大腸菌株では発現が全くみられなかった。Ag85B全長については、2種類の大腸菌で発現がみられた。 3. 非結核性抗酸菌症(NTM症)における細胞性免疫応答の解析:2019年度は、NTM症の臨床検体を入手することができなかったが、潜在性結核患者の検体を施設内倫理委員会の承認のもと、書面で同意を得て採取し、末梢血単核球を分離し、in vitroで種々の抗原で刺激したのち、細胞内サイトカイン産生をフローサイトメトリーで解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定よりも、ペプチドワクチン作成とNTM症における細胞性免疫応答の解析がやや遅れている。 ペプチドワクチンの作成においては、抗原用のタンパク質の準備がやや遅れている。我々の当初の見込みに反して、エピトープペプチドにHisタグをつけた合成遺伝子は、大腸菌株での発現が全くみられなかった。Ag85B全長は発現が認められたが、精製すると分解産物が多くなるため、精製過程の改善が必要であることがわかった。 NTM症における細胞性免疫応答の解析については、研究に同意してくださる患者さんのリクルートがうまくいかず、2019年度はNTM症の患者さんの検体を採取することができなかった。加えて、2020年2月中旬より、新型コロナウイルスの感染の流行が始まり、臨床の場において、NTMの患者さんの検体を研究目的に採取する余裕がなくなってしまったことも理由にあげられる。 rBCG-Mkan85BのNTM感染防御能の評価の実験については、概ね実験計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年4月現在、新型コロナウイルス感染症の蔓延状態が続いている。したがって、今年度も引き続きNTM症患者さんの検体採取には困難が伴うことが予想される。しかし、なるべく研究を遂行するために、今年度から、検体採取をお願いする病院を増やして、多くの患者さんの検体を採取できるように、体勢を整える。その場合には、施設内倫理委員会と、検体採取をしていただく病院の倫理委員会の承認を得て行う。 ペプチドワクチン作成についてはタグの位置を変えるなど、プラスミドの構築、あるいは精製の方法を工夫して、膜透過性ペプチドの作成を目指す。膜透過性ペプチドが完成したら、まずはin virtoで細胞内への取り込みが見られるかどうか検討する。 rBCG-Mkan85BのNTM感染防御能の評価の実験については、現在2回目の感染実験の準備中(ワクチン投与中)である。M.avium, もしくはM. kansasiiを感染させて、一定期間後に解剖し、肺の生菌数を検出する。また、脾臓細胞を用いて、細胞性免疫応答をフローサイトメトリーで解析する。さらに、NTM症患者は女性に多いことが知られているため、今年度は、オスとメスのマウスを用いて感染実験を行い、感染感受性における性差の有無を観察する。コントロールとして、既存のBCGを用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は初年度に10名程度の非結核性抗酸菌(NTM)症の患者さんの検体を採取することを計画していた。しかし、断られることも多く、また、新型コロナウイルス感染症の流行などがあり、当初の計画通り、NTM症の患者さんの検体を採取することができなかった。したがって、NTM症患者検体の処理、解析に使用するチューブ、抗体、FACS用シース液などの器具・試薬などの支出額が少なかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、より多くのNTM症の患者さんの検体を集めるために、検体採取をお願いする病院を増やす準備を行なっている。現在、倫理委員会の承認を得るために申請中である。次年度使用額は、NTM症患者検体の解析に使用する予定である。
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