研究課題/領域番号 |
19K08940
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研究機関 | 北陸大学 |
研究代表者 |
大黒 徹 北陸大学, 薬学部, 教授 (80291409)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コロナウイルス / 抗ウイルス薬 / ファビピラビル |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延にともない、デキサメタゾンやバリシチニブといった薬剤以外で直接的に新型コロナウイルスの増殖を抑制する抗ウイルス薬としてはレムデシビルが特例承認された。しかしながら、その他の薬剤は未だに承認に至っておらず、様々な薬剤が新型コロナウイルスに対する治療薬の候補として研究されている。ファビピラビル(開発コード:T-705、商品名:アビガン)もその内の1つであり、抗インフルエンザ薬として2014年に条件付きで承認された薬剤で、細胞内でリボシル三リン酸化されRNAウイルスがコードするRNA依存性RNA合成酵素を阻害することから、インフルエンザウイルスだけでなく、様々なRNAウイルスにも効果があることが報告されており、+鎖RNAウイルスである新型コロナウイルスに対する効果が期待されている。 ファビピラビルは、宿主細胞のヒポキサンチン グアニン ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)によって活性化されることが報告され、ドッキングシミュレーションより、ファビピラビルの6位のフッ素(F)を塩素(Cl)や臭素(Br)に置換した誘導体は、HGPRTに対し親和性が高いことを共同研究者が見出した。また、ファビピラビルはどのRNAウイルスに対して最も効果が高いというわけではなく、ウイルスによってはファビピラビル誘導体の方が効果的であることが報告されている。 そこで、ファビピラビル及びその誘導体と新型コロナウイルスに効果が期待されている薬剤を比較し、効果を検討する事を研究の目的とした。ウイルスはヒトコロナウイルス229E株を使用し、薬剤はファビピラビルやその各種誘導体と、レムデシビル(活性化体:GS-441524)、イベルメクチン、ナファモスタット、ニタゾキサニド、リバビリン等も比較に用いた。抗ウイルス薬の効果は、定量PCR法とTCID50によって評価を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は当初予期できなかった新型コロナウイルス感染症蔓延のため緊急事態宣言が発出され、本大学も学生の登校禁止、ウイルス核酸抽出試薬の欠乏、PCR酵素やチューブの欠品、県外への移動の自粛等の事態に陥ったため、研究の遂行に大きな支障が出たため。
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今後の研究の推進方策 |
現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症が世界的に大問題となっているため、ヒトコロナウイルス229E株を用いて、ファビピラビルやファビピラビル誘導体の有効性、遺伝子変異による耐性化ウイルスの出現についての基礎的研究を実施している。これまでインフルエンザウイルスやポリオウイルスを使った解析で、ファビピラビル存在下では耐性化変異ウイルスといえるような遺伝子変異を検出することはできていない。 今後は、新型コロナウイルスに有効とされる他の薬剤とともにファビピラビルで同様の研究を行う予定である。すなわち、それらの薬剤存在下の細胞で、ヒトコロナウイルスの培養を繰り返すことで薬剤感受性の変化やヒトコロナウイルスの遺伝子変異についても検討を行なっていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、2020年度日本ウイルス学会が中止になったことや、大学が登校禁止になり研究に従事する学生の投稿や、ウイルス核酸抽出試薬、PCR試薬、PCRチューブの欠品が相次ぎ、実験研究の遂行が妨げられたため、大幅に支出額が予定額より下回った。
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