新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)はスパイクタンパク質の多彩な変異が認められ、感染力と病原性の異なる変異ウイルスの出現が問題となっている。レムデシビル、モルヌピラビルはSARS-CoV-2のRNAポリメラーゼの活性阻害により、エンシトレルビルはプロテアーゼ阻害によって抗ウイルス効果を示す。コロナウイルスの増殖を直接的に阻害する薬剤が承認されて使用できるようになったため、臨床現場で薬剤耐性ウイルスの出現が危惧される、本研究では、臨床現場で薬剤耐性ウイルスが出現した際に一部の遺伝子の配列を調べるだけで薬剤感受性か耐性かを判別できるようにすることを目的とし、薬剤存在下でコロナウイルスを培養し、薬剤耐性ウイルスの分離と遺伝子変異箇所の決定を試みた。 弱毒性のヒトコロナウイルス 229E株 (HCoV-229E)において、抗ウイルス効果が認められたレムデシビル、ファビピラビル、リバビリン、モルヌピラビルの4つの薬剤における薬剤耐性ウイルスの発現について検討した。 各薬剤の50%プラーク減少濃度は、レムデシビル:0.33μM、ファビピラビル:16μM、リバビリン:38μMであり、レムデシビルはファビピラビルの約1/50、リバビリンの約1/100の濃度で抗ウイルス効果を示すことがわかった。 上記薬剤存在下でHCoV-229Eを培養し、薬剤耐性が認められるウイルスの検出を行った。 その後、HCoV-229EのRNAポリメラーゼ部位の塩基配列からプライマーを作成し、RNAポリメラーゼ部位のPCRによる増幅を検証した。その結果、リバビリン存在下で培養したウイルスで遺伝子の増幅がみられたので遺伝子配列の解析を行った。
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