研究課題/領域番号 |
19K08943
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
井関 將典 川崎医科大学, 医学部, 講師 (30532353)
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研究分担者 |
石原 克彦 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10263245)
矢作 綾野 川崎医科大学, 医学部, 助教 (10584873)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | B細胞 / マクロファージ / 自然免疫 / 細胞膜外酵素 / TLR / IL-6 / 抗体産生 |
研究実績の概要 |
本研究ではADPリボシルシクラーゼ活性をもつ細胞膜外酵素ファミリーを形成するBST-1およびCD38による新規TLRシグナル制御機構を解明し、BST-1/CD38の感染・炎症疾患における役割を明らかにすることを目的としている。 これまでBST-1を発現するB細胞の亜集団である脾臓辺縁帯(MZ)B細胞をLPS刺激した際の細胞の生存が野生型(WT)と比較してBst1遺伝子欠損マウス(KO)MZ B細胞で亢進していることを示してきた。SPF環境でBst1遺伝子ヘテロ接合体マウス同士を交配させて作製したWTとKOを用いて同様の実験を行ったところ、観察されていたKOの細胞生存亢進が見られないことが分かった。そこで本研究の基盤となったI型胸腺非依存性(TI-1)抗原であるTNP-LPSに対する免疫反応をSPF同腹由来WTとKOを用いて調べたところ、抗原特異的抗体産生がKOでもWTと同程度に起こり、以前観察されたような反応の亢進は見られなかった。同一ケージでの飼育は非定着性腸内細菌叢を均一化すると考えられ、以前に観察されたKOにおける反応性亢進は別ケージで飼育したWTとの間で存在した非定着性腸内細菌叢の差に依存した可能性がある。 脾臓MZ B細胞以外のB細胞亜集団においてもBST-1が細胞表面に発現している可能性を考えてフローサイトメトリー解析を行った結果、小腸パイエル板内の胚中心B細胞の一部にBST-1が発現していることを新たに発見した。胚中心B細胞はBST-1のファミリー分子CD38の発現が低下する唯一のB細胞であり、BST-1独自の機能が期待できる。また抗原免疫後に脾臓などに誘導される胚中心B細胞ではBST-1の発現は見られず、小腸に特異的な現象であることも分かった。今後はBST-1によるIL-6産生制御機構と共に小腸パイエル板B細胞におけるBST-1の機能についても解析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響により大学の教育業務にかかる時間が増加したこともあり、予定通りに研究が進められなかった。また、本研究を開始する元となったTI-1抗原に対するBst1 KOマウスの抗体産生反応の亢進がマウスの飼育環境の影響である可能性が示唆されたことから、一部の実験の遂行については当初の計画とは異なることとなった。しかし新たに自然免疫に深く関係する腸管組織内にBST-1が発現するB細胞を発見することができたので、大幅な計画の変更を必要とすることなく研究を進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新しく発見したBST-1を発現するB細胞である小腸パイエル板胚中心B細胞について、BST-1陽性と陰性細胞にどのような差があるかを明らかにする。またBst1 KOマウスを用いて腸管免疫、特に抗体産生におけるBST-1の機能について検討する。またこれまでBST-1を発現する免疫細胞として解析を続けてきたMZ B細胞とマクロファージにおいてIl6遺伝子、またその他発現が変化するケモカイン遺伝子の転写調節と転写につながるシグナル伝達をマウス由来細胞および培養細胞を用いて実験を行う。更に生体におけるBST-1の役割を解析するためマウスへのLPS投与実験も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予想していた結果とは異なる実験結果が出たこと、また研究に充てられる時間が十分でなかったことから予定していた研究が遂行できなかったため令和2年度分の経費を一部令和3年度へと繰り越した。繰り越し分は令和3年度交付額と合わせて主に消耗品(抗体等の実験用試薬)に使用する。また短い時間ではあるが研究補助員の雇用にも使用し、効率的に研究を進めていきたい。
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