研究課題
中東呼吸器症候群(MERS)は、2012年に発見された新興感染症であり、MERSコロナウイルス(MERS-CoV)によって引き起こされる重症肺炎である。MERS-CoVによる重症肺炎の機序はいまだ明らかにされておらず、治療薬やワクチンの開発も進んでいない。MERS-CoVの重症肺炎の原因を知ることは、治療薬開発や感染予防法を解明していく上で非常に重要である。そこで、MERS-CoVの重症化機序を解明するために、MERS-CoVのレセプターを発現するトランスジェニック(Tg)マウスを使用した。このTgマウスは一過性の体重減少と中程度の肺炎を示すが、重症肺炎には至らず回復する。そこで、Tgマウスで重症肺炎と回復時の相違を調べ、MERS-CoVの重症化機序を解明しようと試みた。重症化した患者の血清では、type 1インターフェロン(IFN)の値が低いと報告されている。そこで、抗IFN-AR1抗体を投与し、IFNによるウイルス排除を抑制した状態でTgマウスにMERS-CoVを感染させた。感染後10日間、臨床症状観察を行い、感染後6時間、1、3、5日で肺のウイルス価を測定し、感染後3、5、7日で肺の病理を確認した。結果として、抗IFN-AR1抗体およびアイソタイプコントロール抗体の投与群において、臨床症状、肺のウイルス価の経時的変化、肺病理について両群間に差は見られなかった。つまり、抗IFN-AR1抗体を投与された群は重症化せず、アイソタイプコントロール抗体群と同様に肺炎から回復した。今回の投与方法では抗IFN-AR1抗体の効果が弱く、ウイルス増殖抑制に関わるIFN産生が完全に抑制されていない可能性もあるが、MERS-CoVの重症化にはIFN以外の因子も関与していることが考えられた。したがって、今後も重症化の因子を探索する必要がある。
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