研究課題
Helicobacter cinaediは、近年易感染宿主において、再燃する菌血症や難治性蜂窩織炎、感染性大動脈瘤などの原因菌として大きな問題となっている。高齢化や治療の多様化に伴い、易感染宿主が増加する事で、H. cinaedi感染症は今後さらに増加していくものと考えられる。H. cinaediは、微好気培養という特殊な培養条件を要するため検出が難しいことから、薬剤感受性、病原因子を含めた細菌学的情報や感染経路に関する情報が極めて乏しく、治療法や予防法が確立していないのが現状である。易感染宿主における菌血症や感染性大動脈瘤などの疾患は、致死的となり得るため的確な治療を迅速に行う必要がある。H. cinaediは、ヒトや動物の消化管内に生息するとされるが、ヒトや動物の保菌状況は明らかにはされていない。その一方で、H. cinaediのヒトへの感染経路のひとつとして、伴侶動物(ペット)からの感染の可能性も疑われている。本研究では、Ⅰ)薬剤感受性測定および薬剤耐性遺伝子の検出によるH. cinaedi感染症の最良の治療法の検討、Ⅱ)ヒトおよび伴侶動物の糞便H. cinaediの保菌状況の把握、Ⅲ)H. cinaediの伝播様式と感染予防策について検討を行う予定である。初年度である本年はまず、臨床分離株と健常人および伴侶動物の糞便収集を継続して行った。得られた株は、遺伝子解析によりH. cinaediの正確な同定を行った。糞便検体は、培養を行い本菌の発育の有無を確認しながら随時検討を進めている。
2: おおむね順調に進展している
臨床検体より検出されたHelicobacter cinaediの収集を行なっている。さらに、健常人ボランティアおよびその伴侶動物から糞便検体の収集も行っている。臨床現場で得られた株については、遺伝子解析により正確な同定を行い、薬剤耐性遺伝子の検出も進めている。糞便検体については、培養と特異遺伝子検出を進めている。以上のように本研究は概ね順調に進展しているものと言える。
臨床検体からのHelicobacter cinaediおよび健常人とその伴侶動物の糞便検体の収集を引き続き継続して行う。培養については、より良い培養条件もさらに検討する。得られたH. cinaedi株については、薬剤感受性を測定と薬剤耐性遺伝子の検出を行い、本菌の薬剤感受性状況を把握する。さらに、病原因子の検出も行う予定である。
消耗品、謝金の費用が予定より少なかったために次年度使用額が生じた。次年度は、さらに検体収集や遺伝子解析などを進める予定であり、その費用として使用する予定である。
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