研究実績の概要 |
2019年度はC. difficileのagr遺伝子のin silico解析と、in silico解析の結果に基づいたC. difficile臨床分離株の中でのagr遺伝子の亜型の分子疫学解析を行った。既に報告があるC. difficileのagr遺伝子のlocusのうち、agr1 locusについてはCD630株のagrB1とagrD1の遺伝子情報を、agr2 locusについてはR20291株のagrB2, agrD2, agrC2, agrA2の遺伝子情報をテンプレートとして、nucleotide BLASTデータベース上に登録があるC. difficileの全ゲノムデータの中で相同性が高いシークエンスを検索した。結果、大きく分けて3つのagr遺伝子パターン、agr1、agr2M、agr2Rが見出された。この3つの遺伝子タイピングを行うプライマーを設計し、自施設に保存されている臨床分離C. difficile株133例を解析した。agr1のみが44株、agr1とagr2R保有が61株、agr1とagr2M保有が26株、いずれも検出されない株が2株あった。
MLST(Multilocus sequence typing)を用いた系統樹解析との関連をみたところ、agr2Rは主にClade 1またはClade 2に、agr2MはClade 4のみにみられた。agr1は大半の株が保有しているが、いずれのagrも検出されなかった2株はClade C-IとC-IIIであった。いずれのagrも検出されなかった株は非毒素産生株であったが、他のagrタイプでは毒素産生株、非毒素産生株ともにみられた。
本年度はこれまでに報告されていないC. difficileのagr遺伝子の分子疫学的多様性を示すことができた。
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