研究実績の概要 |
C. difficileのagr遺伝子の分子疫学と機能解明の研究を本年度も行った。機能解明のために、CRISPR-Cas9システムを用いたプラスミドベクターを構築し、agr関連遺伝子欠損株の作成することを目指したが、本年度内に変異株の確立には至らなかった。 分子疫学については、agr1、agr2M、agr2Rの3つのタイプをさらに解析するため、GenBank上に登録されたwhole genome sequenceのうち、agr lociを持つと推定されるものを抽出し、agrの亜型と構成遺伝子A、B、C、D別に推定されるアミノ酸配列のグループ分けと配列の比較を施行した。 Agr1に関しては、Dにはアミノ酸が48個中で1つのみ違う亜型が存在した。また、Bにはアミノ酸192個中で最大11個が基準株と異なるものを含めて7つの亜型が存在する他、基準株と比較しframeshiftに伴うstop codonが出現する配列が3種類見られた。Agr2Rでは、Dで2種類、Cで6種類の基準株と同じ長さのアミノ酸配列が推定された。BとAでは完全な長さの亜型がそれぞれ6種類及び2種類、frameshiftに伴うstop codonが出現するものがそれぞれ1種類ずつ見られた。Agr2Mでは、基準株と同じ長さのアミノ酸配列がDが1種類、Bが2種類、Cが2種類、Aが3種類に分類され、Cではframeshiftに伴うstop codonが出現するものが1種類あった。 以上のように、agr1, agr2R, agr2MのいずれにおいてもDのアミノ酸配列には多様性がほとんどなく、C. difficileの agrに由来するQuorum sensingのシグナルは菌株を問わず同じものである可能性が示唆された。
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