研究課題/領域番号 |
19K08953
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研究機関 | 高知学園大学 |
研究代表者 |
松崎 茂展 高知学園大学, 健康科学部, 教授 (00190439)
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研究分担者 |
山本 哲也 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00200824)
内山 淳平 麻布大学, 獣医学部, 講師 (20574619)
渡辺 茂 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (70253333)
福田 憲 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (70335751)
北村 直也 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (70351921)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 抗酸菌ファージ / 結核菌 / ライシン / 脂質分解酵素 |
研究実績の概要 |
スメグマ菌や結核菌等の抗酸菌の細胞表層には、ミコール酸という脂質層、アラビノガラクタン層、およびペプチドグリカン層がある。抗酸菌へのバクテリオファージ感染時には、吸着後にこれらの層に微小な穴をあけ尾部先端部を細胞膜に到達させ、また感染終期には子バクテリオファージを放出するために、これらの層の破壊が必要であると予想される。研究代表者は、phosphoesteraseとLysinAが、その活性の一端を担っていると予想していた。 本研究では、結核菌とスメグマ菌の両者に感染できるバクテリオファージ Y2 が保持すると予想される2種の酵素、phosphoesterase と LysinA について、スメグマ菌の増殖への影響を検討した。 我々は、バクテリオファージ Y2 のDNA上にあり、脂質層の分解に関わると予想されるphosphoesterase 遺伝子と、ペプチドグリカン層の分解に関与すると予想される LysinA の遺伝子を大腸菌内で発現させ、大腸菌細胞の破砕液中に存在すると予想される両酵素のスメグマ菌の増殖への影響を予備的に計測した。 バクテリオファージ Y2 の phosphoesterase はかなりの部分が不溶性画分に来るが、可溶性画分に残存する活性により、スメグマ菌の凝集活性が著しく抑制されることがわかった。一方、LysinA は分子サイズが大きいため N-末端部分を欠失した分子で検討したところ、スメグマ菌の増殖を強く抑制することが分かった。 以上から、phosphoesterase および LysinA はスメグマ菌の増殖を抑制すると考えられた。バクテリオファージ Y2 は、スメグマ菌と同様に結核菌にも感染できることから、これらの酵素は結核菌の増殖をも抑制すると期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究により、計画当初に予想していたバクテリオファージ Y2 がコードする脂質分解酵素およびペプチドグリカン分解酵素(LysinA)遺伝子の産物が、抗酸菌の増殖に実際に機能するということが示され、研究の根幹部分が確認されたことになる。しかし、研究代表者の研究機関異動にともない、新しい施設での実験に必要な遠心機や多くの装置を整えるのに多くの時間を要し、若干の遅れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度は、粗調製のPhosohoesterase、LysinAを用いて実験を行なった。最終年度は以下の実験を行う。(1)両酵素の精製標品による、スメグマ菌の増殖および溶菌活性の検討。(2)酵素標品の金コロイド、シリカビーズへの付着。(3)マウスおよびマウスマクロファージへの感染系構築の検討。以上により、本酵素による結核菌を含む抗酸菌感染症制御に向け研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の研究機関異動およびコロナ蔓延にとなう移動制限により、実験準備等に時間がかかり、当初予定の実験の遂行にが生じたため、繰越金が生じた。最終年度には、当初計画を行なうため予算を執行する予定である。
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