研究課題
本研究では、2種の抗酸菌、すなわち結核菌およびスメグマ菌の両者に感染できるバクテリオファージ Y2が保有する 2 種の溶菌に関係する酵素(ペプチドグリカン分解酵素およびミコール酸分解酵素)を調製し、その混合物のスメグマ菌 5 菌株に対する溶菌/増殖抑制活性について検討を行なった。推定ミコール酸分解酵素のフルサイズでの大腸菌での発現は、その大部分が不溶性画分に行き、可溶性画分には僅かしか残存しない。しかし、前年の予備実験により、その可溶性画分にある少量の酵素であってもスメグマ菌の凝集を抑制する活性が示された。また、推定ペプチドグリカン分解酵素は、活性ドメインを含む C 末端側のみでも弱いながら溶菌活性が認められた。そのため本研究では、上記 2 種の酵素を混合し、複数のスメグマ菌株に対する影響を検討した。(1)mc2 株に対しては、上記酵素混合液が比較的強い溶菌/増殖抑制を示すことがとが再確認された。そのため本究を進めるにあたり、mc2 株が最適であると考えられた。(2)Jucho株に対しても、溶菌/増殖抑制活性が認められた。(3)一方、ATCC607株,JIS11134株、NJ130419株に対しては、溶菌/増殖抑制活性は認められなかった。以上から、上記酵素混合液はスメグマ菌に対し、溶菌/増殖抑制効果を示すことが示された。しかし、菌株ごとに上記混合物の溶菌/増殖抑制活性に対する感受性が大きく異なることも示された。全ての菌株に対して強い溶菌/増殖抑制示すようにするには、推定ミコール酸溶解酵素の可溶性の増強、および推定ペプチドグリカン分解酵素の N 末端側のアミノ酸配列の追加による活性増強法の開発が必要であると推察された。本酵素混合物は、バクテリオファージ Y2 がスメグマ菌と同様に結核菌にも感染できることから、結核菌の細胞壁をも分解できると期待される。
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