研究課題
狂犬病は致死率ほぼ100%のウイルス性脳炎であるが、曝露後治療法(PEP)が狂犬病ウイルスによる咬傷曝露後に発症を抑えるための唯一の方法である。皮下~筋層におよぶ深い咬傷や粘膜や損傷皮膚の唾液による汚染などの重度のカテゴリーⅢ曝露の場合、狂犬病ワクチンの連続接種に加えて、直ちに抗狂犬病ウイルス免疫グロブリン製剤(RIG)を投与する必要がある。これまでにファビピラビルはin vitro, in vivoで狂犬病ウイルスの増殖を抑制することを明らかにしてきたが、実験感染モデルでの生残率は約70%と完全なものではなかった。そこで、本年度はファビピラビルの投与後にワクチンの連続接種を行い、通常のPEPと同様の治療レジメに沿って、その有効性を評価した。カテゴリーⅢを模した創傷感染モデルマウスを用いて、in vivoイメージングにてウイルス感染動態の評価と、ワクチン接種との併用におけるファビピラビルの有効性の評価を目的とした実験を行った。カテゴリーⅢを模した創傷感染モデルマウスにPEPとしてワクチン接種(接種0, 3, 7日後)のみ、あるいはワクチン接種に加えて接種0日目にHRIG(40IU/kg)、接種0から6日目にファビピラビルを胃ゾンデを用いて経口投与(300mg/kg)した。PEPなし群、あるいはワクチン接種のみ群ではそれぞれ4/4匹、1/6匹が発症・瀕死であったが、HRIGあるいはファビピラビルを投与した処置群ではすべてが生残した。興味深いことに、ファビピラビル投与群においては、感染初期に脊髄でのウイルス増殖が見られたものの、接種35日目にはそれらが消失しており、ワクチンによる抗体誘導と相まって、ウイルスの脳内での増殖に至らないことが明らかとなった。以上の結果から、ファビピラビルはHRIG同様にPEPにおける初期ウイルス増殖抑制のための薬剤として代替できる可能性が示唆された。
すべて 2021 その他
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