研究課題
本研究は、プロバイオティクス等を用いて消化管粘膜免疫を活性化させることが必ずしもバクテリアル・トランスロケーションの抑制につながらず、むしろ感染症を負の方向に増悪させる可能性についても検討することを目的としている。バクテリアル・トランスロケーションの抑制は、基本的に消化管免疫の活性化あるいは消化管上皮の障害の回避、常在菌叢による病原菌の制御などによってもたらされると考えられる。ただしその一方で、プロバイオティクスが有する特徴が生体にとって、必ずしも有益とは限らない可能性も考えられる。その1つの作用としては、免疫系の過剰な活性化であり、これによってサイトカインの過剰産生がサイトカイン・ストームなどを誘発する可能性が考えられる。さらにプロバイオティクスとして用いた菌や常在菌叢の一部であった菌そのものが病原性を発揮したり、薬剤耐性を有することで治療抵抗性をもたらす可能性も示唆される。そこで本研究においては、腸管内の常在菌叢の一部として定着可能な菌種を選択し、さらに海外からも耐性度が高い菌株を入手することによって、抗菌薬投与下などで起こり得る腸管内の常在菌叢の変化やバクテリアル・トランスロケーションへの影響について検討することで現在、準備を進めている。なお、プロバイオティクスとして用いる菌株も抗菌薬の影響が考えられるが、本年度はさらにプロバイオティクスとして用いる菌株のバクテリアル・トランスロケーションのリスク評価なども含めて検討予定である。
4: 遅れている
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、海外での調査で得られた菌株を対象として予定していたスクリーニングが、菌株の輸送自体ができない状況が続いたため、予定より大幅に遅れている。ただし、今回、輸送面ではすでに海外の大学や運送会社との交渉が上手くすすみ、必要な菌株が入手可能な見込みとなっている。
すでにバングラデシュから耐性度が高い菌株を国内に輸送する手続きは進めており、5月を目途に入手可能と考えられる。それらを用いた検討は今年度の前半である程度のデータが取得可能と考えられる。さらに、マウスを用いたバクテリアル・トランスロケーションの研究そのものには各種の制約もあるため、常在菌叢やプロバイオティクス菌株との相互の影響を評価し、さらに抗菌薬投与下での影響等についても研究を進めることで当所の目的に近づけられるように実施していく予定である。
新型コロナウイルス感染症の流行による影響で実験の実施が遅れ、次年度に一部の研究を繰り越さざるを得ない状況となったため。次年度は繰り越しした研究計画を実施できるよう準備を進めている。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件)
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