研究課題/領域番号 |
19K08963
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
大林 真幸 昭和大学, 薬学部, 准教授 (70349041)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 敗血症 / ARC / メロペネム / 薬物動態 / クレアチニンクリアランス |
研究実績の概要 |
敗血症患者の治療薬として腎排泄型のメロペネムが投与されている。近年、集中治療領域において入院患者の腎クリアランスが過剰に増大したAugmented Renal Clearanceが問題視されている。また、重症感染症患者では全身状態の変動に伴い、薬物の分布容積やクリアランスなどの薬物動態が大きく変動することが報告されている。そのため、時間依存性のメロペネムの効果を最大限に引き出すためには薬物動態学を考慮して、メロペネム血中濃度が最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration, MIC)を超えている時間 time above MIC(%T>MIC)を出来る限り延長する必要がある。しかし、ARC状態下の敗血症患者を含めた最適なメロペネム投与量の調節方法は確立されていない。 そこで、申請者はARCを伴う敗血症患者の血液サンプルと臨床データを用いてメロペネムの母集団薬物動態モデルを構築し、腎機能に基づくメロペネムの最適投与レジメンを検討した。 ARC状態下の敗血症患者を含む計31名から100ポイントの臨床検体の収集・解析を行い、実測クレアチニンクリアランス(Ccr)を共変量として含む薬物動態モデルを構築した。各レジメンについてモンテカルロシミュレーションを行い、目標達成確率(PTA)を決定した。50%または100%T>最小発育濃度(MIC)のPTAを腎機能ごとに算出した。その結果、50%T > MICでCcr ≧ 85mL/minの場合、PTAを達成するためには投与時間の延長が必要であることを明らかにした。さらに、100%T > MICを達成するための投与方法は投与時間の延長と投与量の増加を必要とした。腎機能に基づいた最適な投与レジメンを投与することにより臨床現場におけるメロペネムの適正使用を推進できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度はARC患者を含めた敗血症患者のメロペネムの薬物動態モデルを構築した。実測Ccrの中央値は87.6 (12.3-223) mL/minであった。腎機能正常者から腎機能亢進者を幅広く対象とした薬物動態モデルとなった。本モデルを用いて、モンテカルロシミュレーションを行い、腎機能に応じたメロペネムの推奨投与レジメンを示した。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、研究協力施設の臨床業務の増加など医療環境の変化に伴い、予定より対象患者(敗血症患者とARC状態化の患者も含め)が減少し、臨床研究を実施する上で支障が生じた。そのため、研究期間を延長し、共同協力者と連携を取りながら2022年度は本モデルを用いて新規に敗血症の治療を行う患者を対象として、腎機能に基づいたメロペネムの推奨投与レジメンの妥当性を検証していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ARC状態下の敗血症患者に特化した薬物動態モデルの構築を目指していたが、新型コロナウイルス感染症の影響で、当初予定していた患者数を得られなかった。そのため、ARC状態下の患者を含めた敗血症患者を対象としたモデルを構築した。2022年度、ARC状態下の敗血症患者をできる限り多く対象として、腎機能が亢進している患者の場合における本モデルの妥当性を含めて検証していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、研究協力施設の臨床業務の増加など医療環境の変化に伴い、対象患者が予定より減少したため、研究実施計画が少し遅れている。2021年度にPK/PD解析を実施したが解析に時間を要したため、解析時間の短縮を目的として高性能のPCを新たに購入し、解析スピードの向上を図る。さらに2022年度は前向き介入試験を予定しているため、臨床検体の処理および解析用の試薬の購入を行う。現在、研究成果の投稿準備中であり、英文校正と投稿費用として約50万円を予定している。その他、昨年度購入できなかったデータ解析ソフト(Endnote、SPSS等)の購入を行う。
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