研究実績の概要 |
【背景】敗血症患者の病態生理の変化により, クレアチニンクリアランス(CCr)や薬物動態パラメータは著しい影響を受ける. しかし, 実測CCrを用いて敗血症患者の腎機能を評価した報告は少ない. そこで, 本研究では実測CCrを用いて敗血症患者のメロペネム(MEPM)母集団薬物動態(PPK)モデルを構築し, Monte Carlo Simulationにより様々な腎機能に基づいた最適な投与方法を検討した. 【方法】昭和大学病院でMEPMを投与された敗血症患者を対象に前向き観察研究を行った. 血液サンプルと臨床情報を用いてPPKモデルを構築し, 各レジメンについてMonte Carlo Simulationを行い, 目標達成確率(PTA)を算出した. PTAが90%以上である投与レジメンを最適と判断した. 【結果】31 人の患者から 100 サンプルを収集した. 実測CCrを共変量として含む2-compartment modelがMEPMの薬物動態を最も良く反映した. 50%T>MIC 4 ug/mLの場合, CCr 85-129 mL/minでは1回 1 g 1日3回 3 hr延長投与, CCr 85-130 mL/minでは1日 3 g 24 hr持続投与が必要であることが示された. 【結論】本モデルは, 実測 CCrを用いて腎機能を正確に評価することにより敗血症患者のMEPM濃度を正確に予測できた. CCr 85mL/min以上の場合, 50%T>MIC 4 ug/mLのPTAを達成するためには投与レジメンの延長が必要であることが明らかになった. 敗血症患者におけるMEPMの効果は, 腎機能及び原因菌のMICに基づいた適正な投与レジメンを選択することにより最大限に発揮できる可能性がある.
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