本年度は、昨年度までに解析したStreptococcus dysgalactiae subsp equisimilis (SDSE)を用いて、3次元皮膚組織モデルに対する感染実験を行った。 まず、ゲノム配列の明らかなSDSEの侵襲感染症由来臨床分離株をモデルに感染させ、経時的に凍結切片を作成し、ヘマトキシリン・エオジン染色ならびに各種抗体を用いた免疫染色を行った。その結果、感染によって上皮組織に傷害が起こり、経時的に増大することが明らかとなった。また、高病原性が示唆されたstG6792・ST17型株を感染させた場合、基底膜を超えて組織中への高度な侵襲が認められた。一方で、上皮の損傷は、程度に違いはあるもののST17 (CC17) 型以外の株でも認められた。高病原性株とそれ以外の株で、昨年度比較ゲノム解析で見出した違いと組織侵襲の関連を見出すことはできなかった。 また、本感染実験において、一部の菌では組織表層にバイオフィルム様構造を形成することを見出した。SDSEは薬剤感受性が高いにも関わらず、重症感染症の場合抗菌薬治療が失敗することがある。そこで、感染モデルを用いて抗菌薬の治療効果を評価した。その結果、SDSEを除去するために必要な抗菌薬濃度はMIC値と乖離していることが明らかとなった。さらに、リファンピシンを併用することで、より効果的に菌を除去できることが示された。本研究で用いたモデルは、SDSEの感染を再現するだけでなく、治療薬や治療法の評価にも有用である可能性が示唆された。
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