研究実績の概要 |
本研究は、網膜オルガノイドに水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)および単純ヘルペスウイルス1型、2型(HSV-1, HSV-2)を感染させ、急性網膜壊死(ARN)の発症機序の解明や治療薬の検討に寄与することを目的としている。 前年度、ヒトiPS細胞由来網膜オルガノイド(RO)に単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)および水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)を感染させたが、感染が認められなかったことを報告した。 今年度、HSV-1のみ高力価(10^7 PFU/ml)で感染を認めることができたが、VZVでは力価の上限(10^4 PFU/ml)の関係かやはり感染は認められなかった。前年度の網膜色素上皮細胞(RPE)への感染性の結果と総合すると、網膜へのウイルス感染経路として、脈絡膜側から垂直にではなく、毛様体側から水平に感染することを今後考慮する必要があると考えられる。また今年度は、抗ウイルス薬についても検討した。ヒトRPE細胞株(ARPE-19)を用い、生体における網膜色素上皮細胞の極性を考慮して、Transwell上でARPE-19を上皮組織様に分化誘導した後、上層からウイルス感染および下層から薬剤添加を行い、蛍光抗体法による抗ウイルス効果の比較を行った。その結果、HSV-1およびVZVの感染に対して、アシクロビル(ACV)が100 μMでも両ウイルスの増殖を抑えきれなかったのに対し、アメナメビル(AMNV)は1 μMで両ウイルスの増殖を完全に抑制した。以上の結果から、特にRPEでACVの効果は限定的であり、AMNVへの切り替えがARN治療成績の向上につながる可能性が示唆された。
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