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2021 年度 実施状況報告書

カニクイザル結核モデルを用いたBCGの防御効果と潜伏感染誘導機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K08968
研究機関国立感染症研究所

研究代表者

辻村 祐佑  国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 主任研究官 (30512404)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード結核 / BCG / 霊長類
研究実績の概要

研究の実施計画としては、①BCGは肺結核・全身性の結核に有効なのか評価する。②BCGの防御効果が有ったサルと無かったサルの結核抗原特異的免疫応答および肺局所への浸潤細胞を比較する。③BCGワクチンと肺局所への肉芽腫形成の関連性を病理学的に解析するという3つの項目を中心に実験を遂行することとし、令和元年度は予定通り①を遂行した。結果としては結核菌(Erdman株)を50 CFU経気道感染させることで、ヒトで報告されている結核病態を誘導できることが分かった。またBCGの肺結核および播種性結核に対する効果もヒトでの報告を再現できるモデルであった。
令和2年度はサルの頭数を増やし、構築したサル結核急性感染モデルについて解析を進め、臓器内菌数の測定においても対照群で認められる全身性の結核感染が、BCG群では強く防御された。ただし、BCGを接種しても肺結核に対する防御効果は弱いという結果も再現された。本実験を遂行する中で、BCG投与群10頭のうちワクチン効果が認められない(臨床診断が悪化した)個体が1頭作出された。そこでBCGの効果が有った個体と無かった個体について②と③の実験を中心に遂行した。本研究成果に関しては令和2年度に報告した(Tsujimura et al. J. Immunol. 2020)。肺局所での抗原特異的免疫応答や自然免疫担当細胞の浸潤、肉芽腫の殺菌能とBCGの有効性の間に相関関係は認められなかった。
また結核病態を規定する肺内菌数と体重や血液・生化学検査、剖検時の白色結節などのスコア、臓器体重比や病理解析スコアとは相関しなかった。そこで当該年度では既存の診断マーカーでは臓器内生菌数を反映しきれていないので、新たなマーカー探索を計画するとともに、構築したサル結核モデルを用いてBCGに対する追加免疫法の開発準備も進めることとした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本研究は、ヒトで認められる結核病変が観察でき、潜伏感染も再現できる唯一の動物であるカニクイザルを用いて、未だ明確ではないBCGの結核防御効果および結核病態を正確に把握することである。
令和元年度はBCGの肺結核および全身播種性の結核に対する有効性を評価し、ヒトで報告される病変を再現できるサル結核急性感染モデルを構築した。令和2年度はサルの頭数を増やし構築したサルモデルを用いて、予定通りBCGのワクチン効果を規定する要因の探索を行った。
免疫学的解析においてBCGのワクチン効果の有無と相関因子は見つけられなかった。またBCGワクチンと肉芽腫の形成や殺菌能との関連性についても肺局所の反応と同様で、BCGワクチンの防御効果と相関する結果は認められなかった。
令和2年度までの進捗状況としては予定通り遂行しており、本研究の成果に関しては論文発表した(Tsujimura et al. J. Immunol. 2020)。当該年度は血漿を用いた新たなマーカー探索や保存してある末梢血単核球細胞の免疫学的解析をするとともに構築したサル結核感染モデルを用いたBCGに対する追加ワクチン法の開発準備を計画していた。しかし世の中の情勢から霊長類医科学研究センターでの長期的な実験を進めることが困難であり、血症を用いたオミックス解析やフローサイトメトリー解析、病理解析の条件検討や準備をするのみに留まり、予定していた解析を行うことはできなかった。

今後の研究の推進方策

令和2年度までにヒトで報告されている結核病態およびBCGの予防効果を再現できるカニクイザル結核感染モデルおよびワクチン効果の評価方法は構築できているので、計画の変更は必要ないと考えられる。BCG投与群10頭から1頭だけワクチン効果を認めないサルを得たので、BCGのワクチン効果を規定する様々な要因もしくは結核の病態を反映する肺の臓器内菌数と相関する要因を探索したが、血液・生化学検査や剖検時スコア、病理解析や免疫学的な解析のいずれからも見出すことができなかった。
令和3年度には予定していた実験(保存した血漿や末梢血単核球細胞を用いたBCGのワクチン効果や結核病態を反映するようなマーカーの探索)の測定条件の検討は行えたが解析には至らなかったので、次年度には解析に入りたい。またBCGの抱える課題の一つである成人の肺結核に対する防御効果の低さを克服するための追加免疫法の開発準備も計画している。

次年度使用額が生じた理由

当該年度においても世の中の情勢から学会発表はなく、霊長類医科学研究センターに出向いての実験や打ち合わせも最小限に抑えた。購入できる試薬類なども限られたため、所有していた試薬で極力まかない、予定していた実験の条件検討や機器のセッティングは行ったが、委託や解析には至らなかったため次年度に使用額が生じた。今後予定しているマーカー探索や詳細な免疫学的・病理学的解析、追加免疫法の開発準備をおこなうため、次年度に予算を繰り越した。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Long-term protective immunity induced by an adjuvant-containing live-attenuated AIDS virus2021

    • 著者名/発表者名
      Okamura Tomotaka、Shimizu Yuya、Asaka Masamitsu N.、Kanuma Tomohiro、Tsujimura Yusuke、Yamamoto Takuya、Matsuo Kazuhiro、Yasutomi Yasuhiro
    • 雑誌名

      npj Vaccines

      巻: 6 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41541-021-00386-5

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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