研究課題/領域番号 |
19K08973
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉川 賢忠 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (70396878)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グルココルチコイド / グルココルチコイド受容体 / 骨格筋 / トランスオミクス / 代謝ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究は、骨格筋肥大と脂肪組織萎縮というエネルギー貯蔵の空間的変容をきたす骨格筋特異的グルココルチコイド受容体(GR)欠損マウス(GRmKOマウス)を用い、マルチオミクス解析を駆使して多臓器連関による個体レベルのエネルギー代謝制御機構を明らかにすることを目的とする。GRmKOマウスでは各臓器や血中のメタボロームの揺らぎが生じ、それがエネルギー貯蔵・供給の変化に帰結していること、さらに、そのような変化が性依存性に生命予後とも関わる可能性が示されている。そこで、体組成変容、骨格筋、肝臓、脂肪におけるトランスクリプトームとメタボロームを調べ、血液のメタボロームと合わせて、多臓器連関を考慮したトランスオミクス解析を行い、過栄養状態への適応や、雌雄、若年・老齢でのオミクス解析に拡張し、エネルギー代謝に重要な鍵分子・ネットワーク候補を同定し、その役割を解明することを目的とした。 3年度中の第2年度である本年度は、初年度からの各種飼育条件におけるコントロールマウスとGRmKOマウスのオミクスデータ取得を継続し、オミクスデータ(骨格筋、肝臓、脂肪組織、血液)に関してトランスオミクス解析を開始した。controlマウスとGRmKOマウスを比較し、差異のある代謝ネットワークと、エネルギー貯蔵変容(体組成変化)に関わらず堅固に保たれる代謝ネットワークを抽出した。また、過食肥満モデル(ob/obマウスとの交配)においても、同様にオミクスデータを採取・解析を開始した。 以上の解析を進めることにより、体組成変容に伴う構成的なネットワーク変容、さらに過食肥満によって発動される代謝の適応システム、高齢マウスの性差、などを骨格筋グルココルチコイド作用との関連から明らかにして、それらのシステムの鍵となる因子・ネットワークが同定できるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コントロールマウスとGRmKOマウスの各種飼育条件におけるオミクスデータが取得され、これらのデータを利用したトランスオミクス解析を開始した。骨格筋、肝臓、脂肪組織が血液を介して連結された代謝フラックスのシミュレーションを行うことで、エネルギー貯蔵変容(体組成変化)に関わらず堅固に保たれる代謝ネットワークを抽出した。また、過食肥満モデル(ob/obマウスとの交配)においても、同様の解析を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
1、見出された候補分子やシグナル、ネットワークに着目した検証実験 体組成変容に伴う構成的なネットワーク変容、過食肥満によって発動される代謝の適応システム、高齢マウスの性差、に関連するシステムの鍵となる候補因子について、関連臓器の蛋白発現や遺伝子発現などを分子生物学的手法で調べる。さらに、補充・阻害、ノックイン・ノックダウン・ノックアウトの系などを用いて、エネルギー貯蔵、エネルギー代謝関連の表現形、生命予後への影響を検証する。
2、 トランスオミクスの拡大と、疾患・臨床応用 上記の検討から、骨格筋グルココルチコイド作用に関わるエネルギー貯蔵制御を担う重要分子・ネットワークを同定し、エネルギーの過剰など種々の外的内的変動への適応基盤となるメカニズムの解明を目指す。進捗をみて、エピゲノムやプロテオーム、リン酸化プロテオームも採取して解析に加えることで、個体レベルでのより包括的なマルチオミクス解析を行う。腸内微生物メタゲノムデータを含めた新たな解析も企画し、随時本研究に組み入れる。その他、血液中のエクソソームが臓器連関を担う可能性も報告されており(Nature. 2017;542:450)、そのような臓器連関の重要性が強く示唆された際は、エクソソーム中のmiRNAや蛋白・ペプチドの解析も追加する。重要分子やネットワークが明らかになった際は、疾患応用を目指した展開研究を立案し治療戦略創成につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費用を可能な限り節約した。具体的には、他の研究費で実施できた実験に関する費用を節約した。また、新型コロナ感染症による学会のオンライン開催への変更により旅費を節約した。研究は概ね順調に進んでおり、新規に同定した因子の詳細な解析費用として今後使用予定である。また、オンラインリモートワークに関連する消耗品にも使用する。
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