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2020 年度 実施状況報告書

連続肝生検組織を用いた非アルコール性脂肪性肝疾患の病理進展因子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 19K08975
研究機関金沢大学

研究代表者

竹下 有美枝  金沢大学, 医学系, 准教授 (40507042)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード非アルコール性脂肪性肝疾患 / 連続肝生検
研究実績の概要

NAFLD合併2型糖尿病患者を対象に、同等にA1cを低下させながら、インスリン値を低下させるSGLT2阻害薬及び上昇させるSU薬、各々が肝病理とエネルギー代謝に及ぼす効果を比較検討した。
臨床/病理学的にNAFLDと診断された2型糖尿病患者をグリメピリド0.5㎎(SU群)あるいはトホグリフロジン20mg(SG群)に無作為割り付けし、48週間治療した。治療前後に肝生検を施行し、肝脂肪化、炎症、線維化をスコア化し、グルコ-スクランプ検査を含む各種代謝マ-カ-の測定を行った。主要評価項目は肝組織スコア。サンプルサイズは40例と算出した。
48週投与後、SG群では、Steatosis (1.80 ± 0.07 → 1.00 ± 0.80, P=0.008)、Lobular inflammation (1.40 ± 0.68 → 0.80 ± 0.41, P=0.001)、Ballooning (1.20 ± 0.70 → 0.55 ± 0.61, P=0.000)、Fibrosis (1.45 ± 0.89 → 0.75 ± 0.97, P=0.000)はいずれも有意に軽減した。SU群ではBallooningスコアのみ有意に低下した。HbA1cはともに有意に低下 (SG群 8.1 ± 1.1 → 6.9± 0.9 %, P=0.002;SU群 8.3 ± 1.3 → 7.4 ± 0.9%, P=0.001)。体重は、SU群で変化せず、SG群で有意に低下(79.8 ± 18.2 → 75.2 ± 17.6 kg, P=0.000)。肝酵素値は、SU群で変化せず、SG群で有意に低下(AST: 42.2 ± 28.5→ 25.5 ± 17.0 IU/L、ALT: 59.4 ± 46.7 → 30.8 ± 23.6 IU/L)。脂質は両群ともに変化なし。
SUとSGは48週後に同等にA1cを低下させたが、SGのみが体重・肝酵素・肝病理スコアを有意に低下させた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1998年以降に臨床的にNAFLDと診断され、2回以上の連続肝生検を施行した患者118名(男性67名、女性51名)を最長15年(平均3.8±3.5年)観察した。延べ342回の肝生検サンプルの病理像をMatteoni分類およびBrunt分類に従って、一人の病理医により系統的に再スコア化した。一般線形混合モデルを用いて、NAFLD病理の時間的・組織学的変化と性別、年齢、BMI(body mass index)、糖尿病病態(HbA1c、血液生化学データ、糖尿病治療)等の臨床パラメーターとの関連を解析し、肝線維化進展と関連する因子を抽出することができた。
今年度は、NAFLD有する2型糖尿病患者に経口糖尿病治療薬を48週間投薬し、治療前後に肝生検を施行し肝脂肪化、炎症、線維化をスコア化し、グルコ-スクランプ検査を含む各種代謝マ-カ-の測定を行う前向き臨床研究の40症例が終了した。今後肝臓の生検時に得られた肝臓サンプルから肝臓の発現遺伝子解析をすすめ、薬剤間の肝臓の代謝の相違を明らかにすることが可能な状態にある。

今後の研究の推進方策

HbA1c、血液生化学データ、インスリン分泌能、人工膵臓を用いた高インスリン血症下正常血糖クランプ試験で求めた臓器特異的インスリン抵抗性、核磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)とインピーダンス法で求めた臓器特異的細胞内脂肪蓄積、血中ヘパトカインレベル、糖尿病治療を含む臨床データと肝病理像推移との関連性を明らかにする。
凍結肝生検組織および末梢血液細胞からRNAを抽出し、遺伝子発現を次世代シーケンサーRNA Seqを用いて網羅的に既知遺伝子の発現解析を行う。また、配列情報から新規の転写産物やスプライシングジャンクションの探索を合わせて行う。さらに、リアルタイムPCR法を用いて糖脂質代謝、炎症・免疫応答、線維化などのNAFLDの病態に関与する遺伝子群や同定した遺伝子群の変化を検討する。
ヘパトカインSelenoprotein PおよびLECT2を測定し、ヘパトカイン推移とNAFLD病理推移の関連性を検討する。
肝病理像推移と関連するエネルギー代謝パスウェイ(解糖系、脂肪酸酸化、ミトコンドリアOXPHSなど)に属する遺伝子群の主成分分析により、肝組織学的変化と糖代謝を中心としたエネルギー代謝変化の関連を解析する。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍にあり予定していた学会発表予定としていた旅費が未使用となった。組織免疫染色用抗体行うために計上した予算が一部未使用となった。今後、旅費、ヘパトカイン測定、遺伝子解析の関連試薬に使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Alcohol Intake Is Associated With Elevated Serum Levels of Selenium and Selenoprotein P in Humans.2021

    • 著者名/発表者名
      Isobe Y, Asakura H, Tsujiguchi H, Kannon T, Takayama H, Takeshita Y, Ishii KA, Kanamori T, Hara A, Yamashita T, Tajima A, Kaneko S, Nakamura H, Takamura T.
    • 雑誌名

      Front Nutr.22;8:633703

      巻: 22 ページ: 633703

    • DOI

      10.3389/fnut.2021

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] LECT2 as a hepatokine links liver steatosis to inflammation via activating tissue macrophages in NASH.2021

    • 著者名/発表者名
      Takata N, Ishii KA, Takayama H, Nagashimada M, Kamoshita K, Tanaka T, Kikuchi A, Takeshita Y, Matsumoto Y, Ota T, Yamamoto Y, Yamagoe S, Seki A, Sakai Y, Kaneko S, Takamura T.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 12 ページ: 555

    • DOI

      10.1038/s41598-020-80689-0.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Study Protocol for Pleiotropic Effects and Safety of Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitor Versus Sulfonylurea in Patients with Type 2 Diabetes and Nonalcoholic Fatty Liver Disease2020

    • 著者名/発表者名
      Takeshita Y, Kanamori T, Tanaka T, Kaikoi Y, Kita Y, Takata N, Iida N, Arai K, Yamashita T, Harada K, Gabata T, Nakamura H, Kaneko S, Takamura T.
    • 雑誌名

      Diabetes Ther.

      巻: 11 ページ: 549-560

    • DOI

      10.1007/s13300-020-00762-9.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Pleiotropic effects of sodium-glucose cotransporter 2 Inhibitor versus sulfonylurea in patients with type 2 diabetes and nonalcoholic fatty liver disease.2020

    • 著者名/発表者名
      Yumie Takeshita, Yuki Kita, Toshinari Takamura.
    • 学会等名
      EASD2020
    • 国際学会
  • [学会発表] Bolus vs. Basal インスリン療法が2型糖尿病患者の自律神経活動に及ぼす作用:2つのランダム化比較試験2020

    • 著者名/発表者名
      竹下有美枝 篁俊成
    • 学会等名
      第35回日本糖尿病合併症学会・第26回日本糖尿病眼学会総会
  • [学会発表] 非アルコール性脂肪肝を合併した2型糖尿病患者に対するSGLT-2阻害薬とSU薬ランダム比較試験(中間解析)2020

    • 著者名/発表者名
      竹下 有美枝,海古井 由佳,田中 健雄,金森 岳広,喜多 裕樹,米田 隆,篁 俊成
    • 学会等名
      第63回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [図書] SGLT2阻害薬が摂食・エネルギ-代謝に与える影響2020

    • 著者名/発表者名
      竹下有美枝 篁俊成
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      中外医学社 ひと味違うSGLT2阻害薬の使い方

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公開日: 2021-12-27  

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