研究課題
CAR8の局在に関して、単離L細胞のRT-PCRおよびGcggfp/+下部小腸の免疫組織学的検討を行った。RT-PCRではL細胞におけるCar8発現は非L細胞に比較して有意に高値であり、免疫染色でもGcggfp/+マウス下部小腸ではGFPとCAR8が共染することを確認した。次に腸管内分泌細胞株STC-1細胞を用いて、各種分泌刺激に対するGLP-1分泌を、siRNAを用いたCar8発現抑制下および発現ベクター導入による過剰発現下で評価した。その結果、リノール酸やα-リノレン酸といった長鎖脂肪酸刺激によるSTC-1細胞からのGLP-1分泌は、Car8の発現抑制により増強、過剰発現によって低下した。一方短鎖脂肪酸、胆汁酸、oleoylethanolamide (OEA)によるGLP-1分泌はCar8の発現抑制による影響を受けなかった。脂肪酸刺激時STC-1細胞内カルシウム濃度の変化をsiRNAを用いたCar8発現抑制下で評価したところ、α-リノレン酸刺激時STC-1細胞内カルシウム濃度の上昇はCar8発現の抑制により有意に増加した。CAR8機能欠失型変異を有するCar8wdl マウスで、経口油脂投与時血中GLP-1濃度を評価したところ、経口糖負荷時のGLP-1分泌は野生型マウスと比べて差を認めなかったのに対して、コーン油投与時GLP-1分泌が野生型マウスに比べて有意に高値であった。CAR8欠損マウスの腸管蠕動や腸管GLP-1含量は野生型マウスと有意な差を認めなかった。以上の結果から CAR8は細胞内カルシウム濃度の調節を介して、長鎖脂肪酸誘導性GLP-1分泌の制御に関与することが示唆された。最終年度では、上記で得られた知見を踏まえ、糖尿病・肥満状態でのGLP-1分泌とL細胞におけるCAR8発現との関連について、検討を開始した。
すべて 2021
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Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.
巻: 320 ページ: G617-G626
10.1152/ajpgi.00312