研究課題/領域番号 |
19K08979
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
堀田 紀久子 大阪大谷大学, 薬学部, 教授 (30360639)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝疾患 |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝疾患の軽度線維化群と高度線維化群でゲノムのメチル化レベルが異なる領域(differentially methylated region (DMR))が存在することを報告してきた。このDMRは2つのネットワークを形成することも明らかにしてきた。非アルコール性肝疾患は肝癌の原因として重要で、特に線維化の進行が肝癌発症に重要であると報告されている。これまでに同定した2個のDMRネットワークが肝癌発症と関連しているか公共データベースを用いて検討した。日本人とヨローッパ人の肝癌患者の肝臓組織メチル化レベルのデータベースを用いた。これらのデータベースで2個のネットワークのうち、減量で正常レベルに変化するDMRネットワークは肝癌細胞でも認められた。このネットワークは肝臓の代謝異常に関連している遺伝子が多く含まれている。非アルコール脂肪肝疾患では肝癌と同様の代謝異常が生じていることが示唆された。線維化進行とともに不可逆的に変化するDMRネットワークは肝癌では認められなかった。このDMRネットワークには癌や線維化に関連している遺伝子が多く含まれている。癌や線維化に関連している遺伝子でも、進行に関連している遺伝子と進行に抑制的に働く遺伝子の両方が含まれている。非アルコール性脂肪肝疾患では肝癌や線維化の進行と抑制の両方の遺伝子が働いていることが示唆された。これらの結果は非アルコール性脂肪肝疾患から肝癌発症に至る機序を解明するのに重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非アルコール性脂肪肝疾患で同定したDMRのうち1つのDMRは肝癌細胞でも認められ、もう1つは肝癌細胞では認められないという結果を導き出せた。その結果から非アルコール性脂肪肝疾患で同定したDMRは肝癌発症にも重要な領域であることを示すことができた。これは当初の計画が予定通りに進行している。解析結果としても意義のある結果をえられている。更なるゲノム・エピゲノム解析については大阪大谷大学と共同研究機関での倫理委員会の承認を得て、解析の準備を整えた。動物実験については必要な手続きを行い、予備実験を開始している。実験設備も整い、概ね計画通りに進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
非アルコール性脂肪肝疾患はメタボリックシンドロームの肝臓での表現型と言われている。非アルコール性脂肪肝疾患と内臓脂肪蓄積はともに異所性脂肪蓄積と称されているが、メタボリックシンドロームにおける非アルコール性脂肪肝疾患と内臓脂肪蓄積の位置づけは明確ではない。腸管から吸収された栄養素がまず到達するのは内臓脂肪である。内臓脂肪は門脈系の支配にあり、門脈を介して肝臓とつながっている。内臓脂肪から肝臓への影響を直接調べるために、高脂肪食投与したマウスや肥満モデルマウスを用いて内臓脂肪蓄積に伴う門脈内のアディポサイトカインやmiRNA量の変化を調べ、非アルコール性脂肪肝疾患との関連性を明らかにする。また、肝癌細胞のメチル化データを用いた解析結果をまとめて論文発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年5月に大阪大谷大学に赴任したため、倫理委員会、動物実験などの承認を受けるのに時間がかかった。データ解析を行い、動物実験の準備を行い、2月から実験を開始する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大があり今後の見通しがたたなくなったので、動物実験を2020年度に行うことにした。そのため、購入予定であった試薬等の費用を2020年度に使用することとなった。
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