研究課題
(1)アディポネクチン/T-カドヘリンシステムによる腎保護作用野生型マウス、アディポネクチン欠損マウスおよびT-カドヘリン欠損マウスを用いて、腎虚血再灌流モデルを作製し解析した。結果、野生型マウスに比して、アディポネクチン欠損マウスおよびT-カドヘリン欠損マウスでは腎虚血再灌流後の血管透過性が有意に亢進しており、アディポネクチン/T-カドヘリンシステムは毛細血管のバリア機能の保持に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、アディポネクチン欠損マウスおよびT-カドヘリン欠損マウスでは近位尿細管周囲への好中球浸潤が亢進しており、野生型マウスに比して炎症状態が重篤化していた。また、既報の通り、野生型マウスでは腎虚血再灌流後の血管周皮細胞(PDGFR-beta陽性細胞)が増加していたのに対して、アディポネクチン欠損およびT-カドヘリン欠損マウスでは逆に低下しており、アディポネクチン/T-カドヘリンシステムが血管周皮細胞の恒常性維持に重要な役割を果たしている可能性を見出している。(2)ヒトにおける血中T-カドヘリン濃度測定の意義T-カドヘリンは、カドヘリン・ファミリーに共通した5つのカドヘリンリピート・ドメインを有し、GPI-アンカー蛋白にて細胞膜上に繋留されている。さらに、他のカドヘリンと異なり、T-カドヘリンはプロドメインを有する形でも細胞膜上に存在している事が明らかになっている。今回、T-カドヘリン抗体を複数作製し、ヒト・T-カドヘリンELISAを新たに構築することができた。現在、糖尿病や心血管疾患患者で血中T-カドヘリン濃度とその臨床パラメーターとの相関につき検討している。
2: おおむね順調に進展している
特に大きな問題もなく、当初の計画通り順調に進行している。
(1)アディポネクチン/T-カドヘリンシステムによる腎保護作用アディポネクチン欠損およびT-カドヘリン欠損マウスにおいて、腎虚血再灌流後に血管周皮細胞(PDGFR-beta陽性細胞)が低下していた現象に関して、培養血管周皮細胞を用いて、そのメカニズムの解明を行う。さらに、STZ負荷糖尿病モデルやAngiotensin II負荷高血圧モデルなど各種腎傷害モデルも作製し、同様の検討を進めていく。(2)ヒトにおける血中T-カドヘリン濃度測定の意義新たに構築したヒト・T-カドヘリンELISAを用いて、糖尿病や心血管疾患患者などで血中T-カドヘリン濃度を順次測定し、臨床パラメーターとの相関につき検討していく。また、健診受診者でも同様の検討を行い、正常値を定めていく。
購入を予定していた抗体が品切れとなっていたため、本費用は繰り越すこととし、令和3年度に使用することにした。
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