研究実績の概要 |
(1)アディポネクチン/T-カドヘリンシステムによる腎保護作用 アディポネクチン欠損およびT-カドヘリン欠損マウスでは、野生型マウスに比して重篤な尿細管障害を呈していた。野生型マウスでは腎虚血再灌流後の血管周皮細胞が増加したのに対して、アディポネクチン欠損およびT-カドヘリン欠損マウスでは逆に低下しており、アディポネクチン/T-カドヘリンが血管周皮細胞の恒常性維持に重要な役割を果たしていることを示した。さらに、培養血管周皮細胞において、アディポネクチンはT-カドヘリン依存的にエクソソーム産生を促進することを見出した。 (2)ヒトにおける血中T-カドヘリン濃度測定の意義 T-カドヘリンは、カドヘリン・ファミリーに共通した5つのカドヘリンリピート・ドメインを有し、GPI-アンカー蛋白にて細胞膜上に繋留されている。今回、T-カドヘリン抗体を複数作製し、ヒト・T-カドヘリンELISAを新たに構築することができた。血中には3種類の可溶性T-カドヘリン(130-kDa, 100-kDa, 30-kDa)が存在することを明らかにした。183人の2型糖尿病での検討において、130-kDaは代謝パラメーターとの相関が強く、100-kDaは臨床パラメーターとの相関はほとんど見られなかった。また、30-kDaはHbA1c, ALT, UA, LDL-C, IMT肥厚度, BNPなどと相関していた。次に、47人の急性心筋梗塞患者における血中T-カドヘリンの経時的な推移を調べた。130-kDaと100-kDaは経時的に低下し入院72時間後に最低値となった一方で、30-kDaは経時的に上昇し入院48時間後に最高値となった。また、入院時アディポネクチンが低値かつ可溶性T-カドヘリンが高値の群が心筋梗塞エリア(CK-MB AUC)は大きいことが明らかになり、新たなバイオマーカーとなる可能性を示した。
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