研究課題/領域番号 |
19K08982
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中津 祐介 広島大学, 医系科学研究科(医), 講師 (20452584)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Pin1 / 骨格筋 / コルチコステロン / 筋分化 |
研究実績の概要 |
本年は、以下のことを明らかにした。 ①マウスにコルチコステロン負荷をすると、骨格筋の重量が低下するとともに、Pin1の発現量も減少する。そこで、骨格筋特異的Pin1 KOマウスを用い、コルチコステロン2週間負荷時の筋重量減少への影響を検討した。コルチコステロン負荷により、コントロールマウスの骨格筋重量は低下したが、意外なことにKOマウスの骨格筋量は、WTマウスより高かった。また、オートファジーのマーカーであるp62の発現量を調べたところ、KOマウスで高いことから、オートファジーを介した蛋白分解がKOマウスの骨格筋で抑制されている可能性が示唆された。以上のことから、ステロイド負荷によるPin1発現量の減少は、筋重量を保つための代償的な応答であると推測された。 ②糖代謝を調節するマイオカインとして知られているIL-15とGDF15の発現量について普通食と高脂肪食負荷時のマウス骨格筋を用いて測定した。その結果、GDF15の発現量については、いずれの骨格筋においても差は認められなかったが、IL-15の発現量は、KOマウスで減少していた。このことから、KOマウスで認められる耐糖能障害は、IL-15の発現量の差が寄与している可能性が示唆された。 ③Pin1類似蛋白としてPar14が知られているため、Par14の骨格筋での役割について検討した。筋芽細胞であるC2C12を2% ウマ血清下で培養すると、筋管細胞へと分化することが知られているが、Par14をノックダウンしても分化への影響は認められなかった。また、2-deoxy-glucose負荷によるAMPK活性化に対する影響も認められなかった。 ④肝臓と骨格筋の臓器連関を調べるために、肝臓特異的Pin1 KOマウスを作成し解析したところ、高脂肪・高コレステロール食負荷時にKOマウスでは、体重当たりの骨格筋重量が高値を示し、臓器連関を介した骨格筋量制御機構が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コルチコステロン負荷により、Pin1 KOマウスの骨格筋においてオートファジーの抑制が起こっている可能性を見出し、またKOマウスで糖代謝が障害されている理由としてマイオカインIL-15の発現低下が明らかにになった。さらに、肝細胞特異的Pin1 KOマウスを用いた解析から肝臓と骨格筋とで、臓器連関による調節機構が存在することが示唆されたため。
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今後の研究の推進方策 |
RNA-seqの結果を基に同定したPin1により制御をうける遺伝子群について、Pin1による機能制御を解析し、代謝に与える影響を検討する。また、Par14のノックアウトマウスの解析を介して骨格筋におけるPar14の役割も明らかにしていく。さらに、骨格筋重量に影響を与えるヘパトカインを同定するとともに、Pin1による発現・機能制御を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
骨格筋特異的Pin1 KOマウスに対するステロイド負荷による骨格筋重量の変化について、順調にその機序の予測がついた。また、肝細胞特異的Pin1 KOマウスを解析したところ、予想に反してWTとKOマウスで骨格筋重量で差が認められた。従って、肝細胞及び骨格筋特異的Pin1 KOマウスの両者を解析することで、Pin1を介した骨格筋機能制御機構をより包括的に解明できると考えられる。しかし、肝細胞特異的Pin1 KOマウスは、まだ十分量飼育できていなかったため、次年度まで延長することで対応したいと考えたため。研究費は、抗体等の各種消耗品に使用する予定である。
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