研究課題
我々はこれまで高脂肪食+ストレプトゾトシン負荷マウスにおいて、特に膵島辺縁領域の細胞で、β細胞からα細胞あるいはPP細胞への分化転換が盛んに起きていることを発見しており、この結果から膵島辺縁領域の細胞には可塑性が高い細胞集団が存在するのではないかと考えた。膵島辺縁領域の細胞に関しては、2017年にVan der Meulenらによって、Virgin β (Vβ)細胞と呼ばれる未成熟なβ細胞の存在が報告されている。そこで、我々が独自に確立したVβ細胞特異的に遺伝子導入可能な電気穿孔法 により、RIP-CreプラスミドベクターをRosa26-YFPマウスの膵臓に導入することによって、Vβ細胞を選択的に標識して系譜を追跡した。そして膵島辺縁部に存在するVβ細胞が、時間経過と共に膵島中核部を構成する成熟したβ細胞に分化することを示唆する結果を得た。本年度は、膵島HUB細胞未分化性の維持と成熟したβ細胞への分化のバランスを決めているのは何か?を明らかにすることを目標とした。解析を遂行するためには、Vβ細胞からβ細胞への分化転換過程を正確に数値化する必要があるが、解析開始時の方法では、免疫組織化学法で検出されるRIP-Cre遺伝子導入細胞が各膵島に数個と少なく、過少評価をする可能性が示唆された。そこで定量的な解析を実施する前に、再度、方法を改良することとした。本年度は、膵臓への電気穿孔法において、RIP-Creプラスミドをβ細胞にさらに高確率に遺伝子導入し、さらに発現したタンパク特にGFPを正確に検出する条件を整えることを試みた。具体的には、遺伝子導入法では遺伝子導入するプラスミドに添加する試薬濃度、タンパクの検出方法では膵臓を摘出後の標本作成条件、免疫組織化学法の再検討を行った。結果、特に組織学的解析において、各膵島においるGFPタンパクの発現を明瞭に検出することが可能となった。
すべて 2021
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Diabetologia
巻: 64 ページ: 2803-2816
10.1007/s00125-021-05560-x.