研究実績の概要 |
血清尿酸値が高いほどパーキンソン病の発症リスクが低くなることが複数の疫学調査で明らかとなっている。一方、パーキンソン病治療薬であるL-dopaは血清尿酸値を上昇させることが古くから報告されているが、その機序の詳細は明らかとなっていない。本研究ではL-dopaもしくはその代謝物が、尿酸トランスポーターの尿酸輸送を変化させると考え、そのトランスポーターを同定することを目指した。 これまでクローニング済みの尿酸トランスポーターに加え、本年度は始めに尿酸の排出を担うトランスポーターABCG2の遺伝子クローニングを行った。続いて、L-dopa代謝物の一つであるdopachromeの合成を行った。ここでは過ヨウ素酸ナトリウム (Kagedal et al., Anal. Biochem., 225, 264, 1995)を用いてL-dopaを酸化することで合成した。反応後、吸収スペクトルで475nmに極大が生じたことをもって合成を確認した。 合成したdopachromeがアフリカツメガエル卵母細胞にて発現させた各種尿酸トランスポーターの尿酸輸送を変化させるか放射性標識した尿酸を用いて検討した。URAT1, GLUT9を発現させた卵母細胞にdopachromeと共に尿酸を加えたが、尿酸の取り込み量はdopachromeの有無で変化が見られなかった。続いて卵母細胞内に予めdopachromeを注入することで尿酸の取り込みが促進されるか検討した。その結果、dopachromeを注入することでGLUT9による尿酸の取り込み量はおおよそ2倍に上昇した。このことは尿酸とdopachromeが交換輸送されている可能性を示している。今後他の尿酸トランスポーターでも同様に検討する予定である。
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