研究課題/領域番号 |
19K08986
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
田中 弦 杏林大学, 医学部, 助教 (20615570)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 尿酸 / L-dopa / パーキンソン病 |
研究実績の概要 |
パーキンソン病の発症リスクは血清尿酸値が高いほどが低いことが複数の疫学調査で明らかとなっている。一方、パーキンソン病治療薬でありドパミン前駆体のL-dopaは血清尿酸値を上昇させることが古くから報告されているが、その機序の詳細は明らかとなっていない。また、日本人の血中代謝物を網羅的に解析したデータベースより、尿酸とL-dopaの血中濃度が非常に高い相関があることが判明した。これらのことから本研究ではL-dopaもしくはその代謝物が、尿酸トランスポーターの尿酸輸送を変化させると考え、そのトランスポーターを同定することを目指した。 昨年度はdopachromeによりURAT1の尿酸の輸送が抑制されることを明らかにした。本年度はその結果を踏まえ、dopachromeによる尿酸輸送の阻害機序を明らかにするためアフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いて検討を行った。URAT1を発現させた卵母細胞に濃度を変えた尿酸をdopachromeと共に加え尿酸の取り込み速度を測定した。その結果、尿酸の取り込み速度は飽和しdopachromeを加えた場合は加えなかった場合と比較し43%低かった。このことからdopachromeは尿酸を非競合的に阻害していると考えられる。 Dopachromeは不安定な化合物であり自発的に脱炭酸反応が起こり5,6-dihydroxyindole(DHI)へと変換されることが知られている。そこでURAT1及びGLUT9による尿酸の取り込みをdopachromeの代謝物であるDHIが阻害しないか卵母細胞発現系検討を行った。その結果、1mMまでDHIの濃度を上げてもGLUT9及びURAT1共に尿酸の取り込みが阻害されなかった。このことはdopachromeの代謝物ではなくdopachrome自体がURAT1の阻害に関与していることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度からdopachromeの合成法を変更しデータを取り直しているため全体的に計画に遅れが出ている。また計画にはなかったが本年度は尿酸輸送体だけでなくL-dopaの輸送を行うアミノ酸の輸送体と尿酸輸送の相互作用の解析も行った。これらのことから計画に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年見出したdopachromeによるURAT1の尿酸輸送の阻害の様式の解析を行ってきた。次年度はdopachromeが本年度に見出した輸送体を阻害するだけでなく輸送されるかを放射性標識したものを用いて解析する、マウスの脳内におけるトランスポーターの局在の確認など計画に従って進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
輸送実験における実験スケールを小さくすることで必要な放射性同位体の量を減らすことができた。これにより高価な尿酸の放射性同位体の購入量を減らすことができ次年度使用額が生じた。本年度はL-dopaなど他の基質の放射性同位体を購入する予定である。
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