研究課題/領域番号 |
19K08987
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石井 智弘 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (70265867)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ステロイドホルモン / リプログラミング / 副腎 / 精巣 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、精巣と副腎皮質におけるステロイドホルモン生合成細胞間のリプログラミングによる相互代償機構の解明、である。当該期間では、全身麻酔下で野生型マウスの両側副腎摘出術、両側副腎および両側精巣摘出術の手技を確立し、副腎ないし副腎・精巣を摘出したマウスのグルココルチコイド産生能を評価し、副腎摘出後の成獣マウスの精巣内におけるグルココルチコイド産生細胞へのリプログラミング能力の有無とその程度について評価した。具体的には、8週齢の野生型(C57Bl/6J)雄マウスを対象として、開腹による副腎の目視のみの偽手術を行ったA群、両側の副腎を摘出したB群、両側の副腎および精巣を摘出したC群に分類し、術後は生理食塩水による給水を行い、体重の変化を経時的に測定した。その後、16週齢の時点で、3群間の体重と生存割合を比較し、血中ACTH濃度、マウスの代表的なグルココルチコイドである血清コルチコステロン濃度を測定した。その結果、3群間の16週齢時の体重や生存割合に有意差は認められなかったが、B群とC群の血中ACTH濃度はA群に比し有意に高値で、B群とC群の血清コルチコステロン濃度はA群に比し有意に低値であった。B群とC群の血中ACTH濃度、血清コルチコステロン濃度には、ともに有意差がみられなかった。この結果により、副腎摘出後の成獣マウスの精巣では、胎生期の精巣とは異なり、グルココルチコイド産生細胞へのリプログラミングが生じにくいことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
両側副腎および両側精巣摘出術の手術手技を安定させることに時間を要した。このため、副腎摘出後の野生型マウス、副腎・精巣摘出後の野生型マウスのグルココルチコイド生合成に評価については計画通りに進行したが、これらのマウスの性腺のトランスクリプトームや蛋白発現の解析、さらにはタモキシフェン誘導型の時期特異的Star欠損マウスのグルココルチコイド生合成との比較は次年度へ変更した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に計画していた、副腎摘出後の野生型マウス、タモキシフェン誘導型の時期特異的Star欠損マウスの性腺のRNAシーケンス解析、蛋白発現解析、組織学的解析をまずは達成させる。加えて、2020年度に計画していた、副腎摘出マウスの性腺におけるコルチコステロン生合成能とACTHの役割の評価、Star-eGFPレポーターマウスを用いた副腎性腺原基様の前駆細胞の収集、トランスクリプトーム・蛋白発現解析を順次進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に生じた余剰金は、手術手技の確立に時間がかかってしまって、予定よりもマウス飼育数が少なかったためである。この余剰金は2020年度以降の動物飼育費で使用する予定である。
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