研究課題/領域番号 |
19K08988
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小谷 紀子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50625332)
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研究分担者 |
中江 淳 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (00344573)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵α細胞 / 膵β細胞 / 糖代謝 / 分化 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
Foxo1CoRepressor (FCoR)は脂肪細胞においてFoxo1をアセチル化することでその活性を制御した(Nakae J. et.al.EMBO J. 2012)。これまでの研究において、FCoRは胎生期よりインスリン陽性細胞およびグルカゴン陽性細胞において発現し、FcorKOで糖代謝異常、Glucagon分泌亢進、膵α細胞量増加を認め、α細胞への分化を誘導する転写因子Arxの発現が有意に上昇することを認めた。FcorKOのβ細胞特異的にFCoRを過剰発現したFcorKO-βFcorでは糖代謝、α細胞量およびArx発現量の正常化を認めた。さらに、FcorKOでは、膵β細胞からα細胞への変換を認め、FCoRがArxの発現を制御することでα細胞量を調整し、膵β細胞の維持に必要であることが示唆された。 Arxの発現はプロモータ領域のメチル化によって抑制される。FcorKO ではArxプロモータ領域のメチル化は減少し、β細胞特異的 Foxo1 KOではメチル化は増加した。さらに、FcorKO のβ細胞特異的に Foxo1 をknockout したマウス(DKO) では、FcorKOと比較して、Arx プロモータ領域のメチル化は増加、Arx の発現は低下、α細胞量の有意な減少を認めた。FcorKO ではFoxo1はArx プロモータ領域に結合し、転写抑制因子複合体の一つであるDNA methyltransferase 3a (Dnmt3a)の結合は解離した。これよりFcorKOではDnmt3aがDNAから解離することでプロモータ領域のメチル化が減少し、Arx の発現が誘導されることが示唆された。単離膵島においてFcorKO ではアセチル化Foxo1の減少を認めた。つまり、FCoR非存在下では脱アセチル化したFoxo1が活性型として核内でArxの発現を誘導すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの解析結果はは2020年1月に論文発表し(iScience 2020 23(1),100798)、おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
これまで膵α細胞におけるFCoRとFoxo1の関わりについて解析を行ってきたが、今後は膵β細胞におけるインスリン分泌に関与する両者のかかわりについて解析を進める方針である。また、発生段階における両者の機能解析については、蛍光免疫染色を用いた評価しかできていないため、分化の段階における機能解析についても踏み込んだ解析を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由は、参加した学会の費用の支払い手続きが一部しかできなかったこと、および、研究室縮小(人員の減少)および効率的な物品調達が可能であったためである。使用計画は、引き続き研究に使用する試薬、消耗品、動物室管理のための資材等に使用する予定である。
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