研究課題/領域番号 |
19K08990
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
金藤 秀明 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80448034)
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研究分担者 |
小畑 淳史 川崎医科大学, 医学部, 助教 (10771298)
下田 将司 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60388957)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インスリン転写因子 |
研究実績の概要 |
膵β細胞は高血糖を認識してインスリンを分泌する細胞であるが、糖尿病発症後に膵β細胞が慢性的に高血糖に曝されると、β細胞におけるインスリン生合成および分泌障害はさらに顕著化する。この現象は膵β細胞のブドウ糖毒性として臨床的にも広く知られている。申請者らはこれまでにこの高血糖毒性の分子機構にインスリン遺伝子の極めて重要な転写因子MafAおよびPDX-1の発現の低下が深く関与すること、またその分子メカニズムなどに関して論文報告している (Kaneto H et al. J. Diabetes 8, 183-189, 2016; Kimura T et al. Diabetes Obes. Metab, 2018; Obata A et al. Diabetologia, 2019)。さらに、Cre-loxPシステムを用いて膵β細胞特異的に、またタモキシフェン誘導性にMafAを発現する肥満2型糖尿病モデルマウスを作成し検討した結果、MafAの発現を保持させておくと、インスリン生合成、グルコース応答性インスリン分泌が回復し、血糖コントロールが改善することも報告しており、MafAの発現低下がβ細胞機能障害に深く関与していることが明らかとなっている(Matsuoka T et al. J. Biol. Chem, 2015)。糖尿病治療薬を用いて糖毒性を軽減するとβ細胞機能は改善するが、この際にMafAやPDX-1の発現も改善することも報告している。しかし、MafA や PDX-1 の発現を直接増加させる因子に関しては報告がない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種の小分子ライブラリーを順次β細胞株MIN6に投与して、RT-PCRにてMafAやPDX-1のmRNA発現を増やすことのできる因子を網羅的に検索し、その際にインスリンのmRNAの発現も増やしているかも同時に検討して総合的に評価してきた。現在までのスクリーニングにて既にいくつかの因子を同定している。MIN6細胞にて変化を認めた薬剤に関しては単離膵島においても同じ結果が得られることも確認した。mRNAを増やすことが確認できた因子に関しては、MafAやPDX-1の蛋白量の変化も確認し、また単離膵島においても同じ結果が得られることも確認した。さらに、MafA や PDX-1 の発現が糖毒性のために低下している糖尿病モデルマウスから単離した膵島においてはさらに大きい効果が得られることも確認した。
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今後の研究の推進方策 |
上記で選択された薬剤に関して、各薬剤の特徴に応じて肥満2型糖尿病モデルマウスに投与し、MafA, PDX-1 の発現量の変化、インスリン生合成、分泌能の変化、さらに血糖コントロールに変化を検討する。細胞培養系では良好な結果でも、動物実験では効果がない可能性もあり、可能性のある薬剤に関してはできるだけ多くの種類の薬剤で検討を進めていく予定である。
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