研究課題/領域番号 |
19K08991
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研究機関 | 公益財団法人朝日生命成人病研究所 |
研究代表者 |
窪田 哲也 公益財団法人朝日生命成人病研究所, その他部局等, 教授(移行) (60385698)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / インスリン抵抗性 |
研究実績の概要 |
ApoE欠損マウスに高コレステロール食を負荷すると血管のIrs2の発現が、高コレステロール食負荷4週目から有意に低下していた。そこで動脈硬化病変形成に重要な役割をしているLDLの構成成分であるリゾフォスファチジルコリン(16:0)をprimaryのマウス血管内皮細胞に添加したところIRS-2の発現が濃度依存的に低下することを見出した。さらにIRS-2を負に制御することで知られているSREBP2の発現を検討したところ、リゾフォスファチジルコリン(16:0)添加によって有意に亢進しており、リゾフォスファチジルコリン(16:0)によって増加したSREBP2の発現が、IRS-2の発現を低下させている可能性が示唆された。次に血管内皮細胞でIRS-2が低下すると、本当に動脈硬化症を発症する のかどうかについて血管内皮細胞特異的IRS-2/ApoEダブル欠損マウスを作成し、高コレステロール食負荷を15週間行った。まずリスクファクターを検討するため に、体重、インスリン値、中性脂肪値、HDL値を測定したが、コントロールと差を認めなかった。さらに、糖負荷試験とインスリン負荷試験を行ったが両群間で 差を認めなかった。この時に、大動脈弁輪部の粥状動脈硬化を検討したところ、血管内皮細胞特異的IRS-2/ApoEダブル欠損マウスでは有意に粥状動脈硬化が亢進 しており、リスクファクターとは独立に、血管内皮細胞でIRS-2が低下すると動脈硬化が促進することが明らかとなった。そこで血管での炎症性サイトカインを検討したところ、MCP-1やiNOSといった炎症性サイトカインやICAM1やVCAM1といった接着因子が上昇していた。今後血管内皮細胞のIRS-2の欠損がどのように粥状動脈硬化を促進するのか、さらなるメカニズムについて解析していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナによる緊急事態制限もあり、一端すべての実験が中止となったため、やや進捗が遅れている。高コレステロール食負荷したApoE欠損マウスの血管のIrs2の発現レベルを検討したところ、高コレステロール食負荷4週目から有意に低下していた。そこで動脈硬化病変形成に重要な役割をしているLDLの構成成分であるリゾフォスファチジルコリン(16:0)をprimaryのマウス血管内皮細胞に添加したところIRS-2の発現が 濃度依存的に低下することを見出した。次にリゾフォスファチジルコリン(16:0)がどのように血管内皮細胞のIRS-2の発現を調節しているのか、またそれによっ て血管内皮細胞の選択的インスリン抵抗性を発症するのかどうか検討するために、IRS-2を負に制御することで知られているSREBP2の発現を検討したところ、リ ゾフォスファチジルコリン(16:0)添加によって、有意に亢進していた。また、血管内皮細胞でIRS-2が低下すると、本当に動脈硬化症を発症するのかどうかにつ いて血管内皮細胞特異的IRS-2/ApoEダブル欠損マウスを作成し、高コレステロール食負荷を15週間行った。まずリスクファクターを検討するために、体重、イン スリン値、中性脂肪値、HDL値を測定したが、コントロールと差を認めなかった。さらに、糖負荷試験とインスリン負荷試験を行ったが両群間で差を認めなかっ た。この時に、大動脈弁輪部の粥状動脈硬化を検討したところ、血管内皮細胞特異的IRS-2/ApoEダブル欠損マウスでは有意に粥状動脈硬化が亢進していた。そこで血管での炎症性サイトカインを検討したところ、MCP-1やiNOSといった炎症性サイトカインやICAM1やVCAM1といった接着因子が上昇していた。
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今後の研究の推進方策 |
リゾフォスファチジルコリン(16:0)添加によりIRS-2の発現は低下して、一方IRS-2の発現を負に制御することで知られているSREBP2の発現は、リゾフォスファチ ジルコリン(16:0)添加によって、有意に亢進していた。このことから、リゾフォスファチジルコリン(16:0)によって増加したSREBP2の発現が、IRS-2の発現を低 下させている可能性が示唆された。そこでSREBP2のノックダウンを行い、リゾフォスファチジルコリン(16:0)刺激後のIRS-2の発現を確認する。また血管内皮細 胞特異的IRS-2/ApoEダブル欠損マウスは、リスクファクターとは独立に粥状動脈硬化が促進していることが明らかとなった。さらに大動脈弁輪部だけでなく血管 における動脈硬化を検討するために、SudanⅣ染色を行う。また血管内皮細胞特異的IRS-2欠損マウスを作製する際に用いたTie2-Creマウスは血管内皮細胞のみな らず、動脈硬化形成に重要なマクロファージに分化誘導する骨髄細胞でも発現しているため、真に血管内皮細胞によるものかは不明である。そこで血管内皮細胞 特異的IRS-2/ApoEダブル欠損マウスに骨髄照射を行い、GFPトランスジェニックマウスの骨髄を移植して、高コレステロール食負荷後の粥状動脈硬化病変につい て検討する。次に粥状動脈硬化発症のメカニズムを明らかにするために、血管内皮機能、マクロファージの接着数などを測定するとともに、 粥腫部分のMAC-2免疫染色などにより構成細胞成分や構成脂質成分を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ下のため実験が十分に出来なかったことと、学会に参加する予定であったが、現地では行われず、すべてweb開催となったため、交通費や宿泊費がなくなったため
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