研究課題
われわれは、肥満2型糖尿病モデル動物を用いて、グルコキナーゼの活性化が膵β細胞量に与える影響を検討した。方法として、6週齢の雄db/dbマウスを普通食非治療群とグルコキナーゼ活性化薬混合食群に群別し、体重、随時血糖、及びグルコキナーゼ活性化薬の作用臓器器官である膵島と肝における組織学的評価や遺伝子発現量について比較した。結果として、体重は2群間で差はなく、随時血糖は非治療群に比しグルコキナーゼ活性化薬混合食群では、投与6日目まで低下し以後は上昇し差は消失した。空腹時インスリン血糖比、膵β細胞量、膵β細胞増殖能はいずれも2群間で差はなかった。一方、肝組織においてはグルコキナーゼ活性化薬混合食群で顕著な脂肪蓄積がみられた。投与1日目の肝遺伝子発現解析では、非治療群に比しグルコキナーゼ活性化薬混合食群で、脂肪合成遺伝子であるChrebp-bが上昇し、糖新生促進遺伝子であるPepckが低下した。投与6日目ではさらに下流の脂肪合成遺伝子であるAcc、Fas、Elovl6が上昇し、Chrebp-bやPepckの変化は消失した。さらに投与0、1、6、14日目の肝組織を用いたAKT、FoxO1、Erkの蛋白発現量の検討では、経時的なインスリンシグナルの変化を認めなかった。以上の結果よりdb/dbマウスへのグルコキナーゼ活性化薬投与により、一過性の血糖降下作用がみられ、その表現型は、膵β細胞の量や機能への影響は認めず、投与初期からの肝脂肪蓄積が亢進した。肝の脂肪合成遺伝子や糖新生遺伝子の経時的な変化が、グルコキナーゼ活性化薬の血糖降下作用の経時的変化と一致しており、それらが血糖降下作用へ影響したと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
グルコキナーゼの活性化が膵β細胞量に与える影響についての検討は、すでに国内外で学会発表を行っており、さらに論文化することができた。
グルコキナーゼの活性化よりも、不活性化が2型糖尿病病態においては膵β細胞量に好影響を与える可能性が示唆された。そのため、膵β細胞グルコキナーゼの不活性化による膵β細胞量への効果に関する更なる詳細なメカニズムを明らかにしていく。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Diabetes, Obesity and Metabolism
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