研究課題/領域番号 |
19K08996
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
槙田 紀子 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60353455)
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研究分担者 |
佐藤 潤一郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50552890)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | GPCR / biased agonism / Ca感知受容体 / βアドレナリン受容体 |
研究実績の概要 |
GPCRと疾患をテーマに、まれな内分泌疾患であってもそのメカニズムを解析することによって普遍的なメカニズムを明らかにするという視点で研究を遂行している。
〇Ca感知受容体自己抗体による機能選択的活性化 (biased agonism):後天性低カルシウム性高カルシウム血症(AHH)患者由来モノクローナル抗体の精製をめざした試みを遂行している。新規AHH症例の候補として、多くの大学・病院と連携をとりながら尿中Ca排泄との乖離を伴う高Ca血症をメルクマールに細胞の系で検討を続けている。また、特発性副甲状腺機能低下症例における自己抗体の関与も検討している。この1年間では新規自己抗体陽性例はなかった。これまで検討してきた中で、細胞の系で薬剤(Ca感知受容体作動薬)の有効性を予想した上で、実臨床でその薬剤による治療を試み、奏功した症例を経験し、報告した(JCI Insight 2019)。副甲状腺機能亢進症患者から摘出した副甲状腺検体を用いて、Ca刺激に反応したPTH分泌を定量的に評価できる条件が整ってきた。
○ Gsシグナルの持続性(sustainability)を指標とした検討:β1,2,3の一過性過剰発現細胞を用いて、Gsシグナルの持続性(sustainability)を指標とし、各種作動薬による細胞内シグナル(cAMP蓄積、ERK1/2)、受容体の膜発現量、活性化受容体へのアレスチンのリクルートを用いた検討をすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
〇Ca感知受容体自己抗体による機能選択的活性化 (biased agonism): Ca感知受容体のユニークな活性型を安定化させるモノクローナル抗体作成を最終目標とし、AHH患者由来のB細胞を起点としてステップを踏みながら進めている。目的のB細胞を濃縮するために、Ca感知受容体の細胞外ドメイン精製タンパクに反応する細胞を抽出する方法を試みたが、未だ目的のクローンは得られていない。新規AHH疑い症例・特発性副甲状腺機能低下症例における自己抗体の検討を継続している。
○ Gsシグナルの持続性(sustainability)を指標とした検討: 293細胞の系で検討を繰り返している。
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今後の研究の推進方策 |
〇Ca感知受容体自己抗体による機能選択的活性化 (biased agonism): AHH患者由来のB細胞を起点としてたモノクローナル抗体のクローニング法について新しい方法を検討する。引き続き、新規AHH疑い症例・特発性副甲状腺機能低下症例におけるの自己抗体の検討を継続する。また、作用点の異なる複数のCaSR作動薬の効果を検討することで、ユニークな自己抗体の作用メカニズムに迫る。
○ Gsシグナルの持続性(sustainability)を指標とした検討: 293細胞の系で確実な結果が得られたら、より生理的な細胞の系でも再現するかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬・キット・血清の多くをストックから使用したこと、予定していた国際学会の参加をキャンセルしたことから、次年度使用額が生じた。次年度は新たに試薬等を揃え、実験を予定する。Covid19の状況が改善すれば国際学会参加も予定する。
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