研究課題
GPCRと疾患をテーマに、まれな内分泌疾患であってもそのメカニズムを解析することによって普遍的なメカニズムを明らかにするという視点で研究を遂行している。〇Ca感知受容体自己抗体による機能選択的活性化 (biased agonism):後天性低カルシウム性高カルシウム血症(AHH)患者由来モノクローナル抗体の精製をめざした試みを継続している。特異抗体を生成・分泌するB細胞が、その抗体が認識する特異抗原を貪食する現象を利用した方法を新たに試みたが、C末に蛍光タンパクを融合させた受容体の十分な膜発現が実現しなかった。新規AHH症例の候補として、多くの大学・病院と連携をとりながら尿中Ca排泄との乖離を伴う高Ca血症をメルクマールに細胞の系で検討を続けている。また、特発性副甲状腺機能低下症例における自己抗体の関与も検討している。この1年間で、自己抗体陽性症例として新規に2例(いずれもAHH)を同定した。よりGタンパク質に近いシグナルを検出する新たなアッセイ法の開発と同時並行で検討しているところである。○ Gsシグナルの持続性(sustainability)を指標とした検討:β1,2,3の一過性過剰発現細胞を用いて、Gsシグナルの持続性(sustainability)を指標とし、各種作動薬による細胞内シグナル(cAMP蓄積、ERK1/2)、受容体の膜発現量、活性化受容体へのアレスチンのリクルートを用いた検討をすすめている。cAMP蓄積、アレスチンリクルートについては、より感度の高いアッセイ法の確立をめざして基礎検討を続けている。
2: おおむね順調に進展している
〇Ca感知受容体のユニークな活性型を安定化させるモノクローナル抗体作成を最終目標とし、AHH患者由来のB細胞を起点としてステップを踏みながら進めている。目的のB細胞を濃縮するために、本年度は、「抗原に対する特異的な抗体を生成・分泌するB細胞が、抗原を認識するとそれを貪食する現象」を利用した方法を試みた。具体的には、Ca感知受容体のC末に蛍光タンパクを融合させたコンストラクトを作成し、接着性のよいHeLa細胞の安定株の作成を試みた。しかし、GPCRのC末に大きなタンパクが付加されると、そのGPCRはタンパクとしてのfoldingができなくなるからか、細胞膜にきちんとtraffickingできなくなることがわかった。現在、別の手法で目的のB細胞を濃縮する方法を模索中である。一方で、全国の医療機関から依頼される新規AHH疑い症例・特発性副甲状腺機能低下症例における自己抗体の検討は継続しており、今年度は新規AHH2例を同定した。○ Gsシグナルの持続性(sustainability)を指標とした検討:cAMP蓄積、アレスチンリクルートについては、より感度の高いアッセイ法の確立をめざして基礎検討を続けている。
〇Ca感知受容体自己抗体による機能選択的活性化 (biased agonism):AHH患者由来のB細胞を起点としてたモノクローナル抗体のクローニング法について再度新しい方法を検討する。引き続き、新規AHH疑い症例・特発性副甲状腺機能低下症例におけるの自己抗体の検討を継続する。また、作用点の異なる複数のCaSR作動薬の効果を検討することで、ユニークな自己抗体の作用メカニズムに迫る。○ Gsシグナルの持続性(sustainability)を指標とした検討:293細胞の系で確実な結果が得られたら、より生理的な細胞の系でも再現するかを検討する。
予定していた参加学会がWeb開催となったことから、次年度使用額が生じた。次年度はCovid19の状況が改善すれば国際学会参加も予定する。
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