研究課題
【方法】腸管上皮細胞特異的Ogt遺伝子欠損マウス(Ogt-VKO)を作製し、表現型を対照マウス(Ogt-flox)と比較検討した。【結果】Ogt-VKOはOgt-floxと比較して離乳直後から低体重 (22.3±0.3 vs 15.9±0.4 g:p<0.05)と随時血糖値の低下 (138.6±7.8 vs 91.8±3.9 mg/dL:p<0.05)を認めた。摂餌量は、Ogt-VKOはOgt-floxと比較して、絶対量では低下していたが、体重で補正すると同等であった。Ogt-VKOにおける体重減少が腸炎の発症と関係するという既報があるが、我々の検討では腸管の短縮や組織での炎症細胞浸潤、TNFαやF4/80などの炎症マーカーの遺伝子発現の上昇は認めず、腸炎の所見は認めなかった。次に栄養素の吸収能について検討した。経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)では、Ogt-VKOで血糖上昇が有意に抑制されたが、経口オリーブオイル負荷試験では中性脂肪上昇は抑制されなかった。一方、腹腔内インスリン負荷試験ではインスリン感受性に差は認めず、低体重・低血糖の原因として腸管からの糖吸収の低下が疑われた。そこで小腸のブドウ糖輸送担体であるSGLT1の発現を確認した。OGT-VKOはOGT-floxと比較して遺伝子発現は50%有意に低下 (P<0.01)していた。さらに蛍光免疫染色にてOGT-floxでは腸管絨毛上皮にSGLT1とO-GlcNAc修飾の代謝産物の共発現を認めたが、OGT-VKOではO-GlcNAc修飾の代謝産物の発現は消失し、SGLT1の発現をほぼ認めなかった。【結論】腸管上皮細胞でのO-GlcNAc修飾は、SGLT1発現を介して糖質の吸収において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
3: やや遅れている
当初予想していた結果とは異なる結果が得られた。そのため、新たな実験計画を作成する必要があったため。
(1)CaCo2細胞にOGTを阻害することで、SGLT1の発現が低下するかどうかをルシフェラーゼアッセイ等で確認する。(2)VilCreERT2マウスを使用し、タモキシフェン誘導後の体重、血糖値、摂食量等の表現型を確認する。(3)SGLT1の発現にOGTがどのようなプロモーター等を介し影響を及ぼしているかを検討する。
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