研究実績の概要 |
制御性T細胞特異的にIL-7レセプター(IL-7R)を欠損するマウスを作製し、解析を行った。IL-7Rを欠損させても制御性T細胞の胸腺や末梢リンパ組織での細胞数には変化がみとめられなかった。また、制御性T細胞の機能にとって重要な分子(CD25, CTLA-4など)の発現レベルにも、コントロールマウスと比較して差はみとめられなかった。これらの結果から、制御性T細胞の分化や末梢リンパ組織での生存、機能性分子の発現にはIL-7Rは必要ないことが明らかになった。 lymphopenicマウス(Rag2欠損マウス)に移植した時のみ、IL-7Rを欠損する制御性T細胞では、コントロールマウスに比べてFoxp3の発現が維持されにくかったことから、IL-2が不足する環境下ではIL-7シグナルが制御性T細胞のFoxp3発現維持に寄与している可能性が示唆された。しかし、制御性T細胞のIL-7Rを欠損させても、in vitro, in vivoでの抑制活性(T細胞増殖抑制、CD45RBhigh CD4T細胞移植による大腸炎の抑制)、in vitro, in vivoでの可塑性(Th1, Th2, Th17などのヘルパーT細胞への変化)はいずれも影響を受けないことが分かった。しかし、制御性T細胞でIL-7Rを欠損させると、非リンパ組織、とくに内臓脂肪に存在する"あるマーカー遺伝子を発現する制御性T細胞集団"のみが特異的に減少していることが判明した。このマーカー遺伝子を発現する制御性T細胞集団は、胸腺にもわずかに存在しており、制御性T細胞でIL-7Rを欠損するマウスでは、この集団が胸腺ですでに減少していることが分かった。
|