研究課題/領域番号 |
19K09002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮崎 早月 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (60452439)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵β細胞 / 転写因子 / 成熟機構 / インスリン分泌 |
研究実績の概要 |
膵β細胞の発生や成熟、インスリン分泌能、糖尿病の発症や進行に深く関わる転写因子Mafaを欠損させた未成熟であるが増殖能を持つMafa欠損β細胞株とMafa-rescue β細胞株をもちいて解析を進めてきた。その過程で、Mafaを発現させ続けても十分に成熟していないことが分かってきた。そこで、Mafa発現はグルコース応答性を得るという1段階目の成熟に必要であるが、更なる成熟過程が存在するのではないかと考えた。本研究課題は、2段階目の成熟過程に必要な環境や因子を広く探求することを目的としている。 これまでの研究で、機能維持や成熟に関与する可能性のある遺伝子や因子の候補リストを作成した。その候補遺伝子や候補因子をMafa欠損β細胞株やMafa-rescue β細胞株に、さまざまな方法で加えて培養することにより、細胞の成熟をGSIS(グルコース応答性インスリン分泌)やUcn3の発現変化を指標に比較検討してきた。さらに培養条件や培養方法についても変更を加え、細胞の性質や成熟度の変化を比較検討した。一方、Ucn3の発現が高く、成熟した性質を有するMIN6細胞(MIN6-CB4)を新たに樹立し、その機能を解析した。成熟した状態からMafaを欠損した場合の遺伝子発現を調べるため、MIN6-CB4のMafa遺伝子をCRISPR/Cas9システムによりノックアウトした。単離培養を行い、両アレルともノックアウトされていると考えられるクローンをいくつか得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、外的刺激に対するMafa-rescue β細胞のクローン毎の反応性の差と細胞の性質の変化との関連に着目し、成熟の促進をGSISの応答パターンより検討した。さらに、新たに樹立したMIN6-CB4細胞の機能を解析し、論文を発表した。この新規細胞株は、オリジナルのMIN6細胞よりもより成熟度が高いと考えられるため、この細胞株をもちいてMafa遺伝子を欠損した細胞を単離した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでMafa欠損β細胞やMafa-rescue β細胞に対し、候補因子の培養液への添加や候補遺伝子の過剰発現を行い、成熟の促進をGSISの応答パターンにより比較検討してきた。候補遺伝子の過剰発現や添加する候補因子の組み合わせやタイミング、添加量よっては、成熟が進んでいることが示唆されたが、より強く誘導するためにはさらなる情報が必要と考えられた。そこで、成熟したMIN6-CB4のMafa遺伝子を欠損させた細胞を作製し、その細胞の遺伝子発現についてMIN6-CB4細胞、Mafa欠損β細胞、Mafa-短期rescue細胞(アデノウイルスベクターをもちいた短期発現)、Mafa-長期rescue細胞(レンチウイルスベクターをもちいた薬剤選択を伴う長期発現)と比較検討し、発現が変化した遺伝子群の中から候補遺伝子をさらに探索し、その影響を解析する予定である。
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